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日本を丸裸にした「日産ゴーン事件」問われるべきは社会という自分自身

事実がまったく解明されず、裁く側も不慮事案に翻弄され、世間の謂われない風評に右往左往しつつ、さらに外圧プレッシャーがのしかかる。前代未聞の経済事件騒動に、まったく終着も予想できないという平成時代の最後の歴史として、それはむしろ相応しいのかもしれない。

時あたかも13.14連休と、報道メディアはいとま中である。余談だが、きょう1月13日の日の出時刻は6時47分(千葉)であり、昨日1日12日6時48分を境として、地球(北半球)の回転が赤道に向かいはじめて、1年365日のカウントが始まる。

カレンダー日付刻印に従い仕事と休暇を分けるのは人間の概念思考であり、宇宙は人間の存在を知ることはない。

おそらく人間は宇宙の摂理を感知することなく目前のカレンダーのみが生活の指標として日々を暮らすのだろう。それはけっして間違いではない。

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私が「検察の正義」を疑う理由 

郷原信郎 記事2019年01月13日 15:36
1月11日、フランスの司法当局が、日本オリンピック委員会(JOC)竹田恒和会長を、東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、「東京五輪」)招致に絡む贈賄容疑での訴追に向けての予審手続を開始したと報じられた。そのタイミングが、日本検察当局が日産、三菱自動車の前会長で、現在もフランスのルノーの会長のカルロス・ゴーン氏を特別背任等で追起訴し、保釈請求に対する裁判所の判断を示される段階になったのと一致したことで、ゴーン氏が逮捕され、長期間にわたって身柄拘束されていることに対するフランスの「報復」「意趣返し」ではないかという見方が出ている。

フランス当局の捜査は、3年前から続けられていたもので、捜査開始はゴーン事件とは全く関係ない。しかし、この対ミンクで、続けられていた捜査が、予審手続の開始という「訴追」に向けての正式の手続であると公表されたことは、ゴーン氏の事件とは無関係ではないように思える。しかし、それを「報復」とか「意趣返し」のような感情的なものとみるべきではない。日本の検察当局が日産・ルノー・三菱自動車の経営トップのゴーン氏に行ったことに対して、日本のオリンピック委員会のトップである竹田会長に、フランス司法当局としてどのような対応をとるかを示し、問題提起をする趣旨と受け止めるべきであろう。

検察の正義への確信の有無で受け止め方が全く異なる
今回のゴーン氏の事件は、平成の時代が終わろうとしている今の日本社会に大きな課題が残されていることを示すものであり、【「日産・ゴーン氏事件」に表れた“平成日本の病理”】では、それを、企業のガバナンス・透明性、検察の在り方、事件報道という4つの面から徹底分析した。

それに対する反応は、「検察の正義」に対する確信の有無によって、大きく二つに分かれる。「検察は正義の味方であり、検察が行うことは常に正しい」と確信している人は、その検察がゴーン氏を逮捕し、しかも起訴までしたのだから、ゴーン氏は「犯罪者」であり、西川社長ら日産経営陣がゴーン氏を経営トップの座から引きずり下ろしたのも正当であり、企業ガバナンス・透明性などということは問題にならない。また、その検察が正義の実現のために行っている捜査について「犯人視・有罪視報道」をすることも、大きな問題ではないということになる。

一方、「検察は必ずしも正義の味方ではない、検察が行うことが常に正しいとは限らない」という前提で、日産経営陣が行ったこと、日産の現状、そして、マスコミの事件報道の問題を客観的に見てみると、そこには大きな問題が浮かび上がってくる。

結局、「検察の正義」を確信するかどうかにすべてがかかっているのであるが、その確信の有無は、何によって生じるのだろう。

私がなぜ「検察の正義」に敢えて疑問を投げかけるのか、特に特捜検察について、「正義」を否定し、検察捜査を批判するのか。

実は、私自身も、大学の理学部を卒業して民間企業に勤めたところまでは、司法の世界と全く無関係で、検察のことなど考えたこともなかった。短期間で技術者を辞め、法曹の世界をめざすことになり、たまたま検察の世界に身を置くことになったが、それがなければ、「検察の正義」を確信する人間の一人として生きていたかもしれない。

私には、検察という組織に属し、特捜部の捜査にも関わった実体験がある。それによって「検察は、特に特捜部は、必ずしも正しいわけではない」との認識につながっている。その実体験について、これまでいくつかの著書で述べてきた。それがどのようなものであったか、著書を引用しつつ振り返ってみたい。

特捜捜査に幻滅した日
若手検事だった頃、多くの検事がそうであるように、私も、特捜部にある種の憧れを持っていた。経済事件、特殊事件の捜査で活躍することが夢だったともいえる。しかし、「他部からの応援」という形で初めて特捜部の捜査に関わった時に体験したことで、私の夢は崩壊した。その時のことを、私は、『検察の正義』(ちくま新書:2009年)の中で紹介している。

「東京地検特捜部の看板」で勝負
私にとって、最も違和感があった第三の問題は、「東京地検特捜部」の看板によって、被疑者や参考人を屈服させて、供述調書をとってしまえば、何でもできるという考え方だった。それが、事実を客観的にとらえ、真相を解明していく、という、本来、刑事事件の捜査であれば当たり前の考え方が通用しない独特の世界を作ることにつながっていた。

この証券担保ローンの背任事件の最大のポイントは、不正融資とされる証券担保ローンの実行の時点で、融資先の投資家の株式損益がどのような状況だったかである。全体として利益が出ているのであれば、ある程度、担保評価を緩めて、融資額を増額することも、あながち不合理な判断とは言えない。

私は、その頃、まだあまり普及していなかった「表計算ソフト」を活用して、頻繁に株式売買を繰り返している投資家の損益を逐次計算できるマクロプログラムを完成させ、背任事件の共犯とされている投資家の被疑者の損益状況を調べてみた。すると、背任融資とされている融資の実行の大半の時点で、トータルでは十分に利益が出ており、大幅な損失は投資の最後の時点で、特定の銘柄によって膨大な損失を出し、それでトータルの損益が大幅なマイナスになったものだということがわかった。そうして判明した事実を、思い切って、主任検事、副部長に報告してみた。しかし、「被疑者が全員、Aはずっと株で損をしていたと言っているじゃないか。お前のパソコンはおかしいんじゃないか。」と一笑に付されてしまった。

それから間もなく、被疑者のAは逃亡し、所在をくらましてしまった。それ以降、事実関係を詰める捜査は棚上げにされ、被疑者の所在を突き止めるための捜査一色になった。Aは、一流大学を出て大企業の社員になったエリートだった。株式売買に手を出し、会社を辞めてプロの投資家のような株式売買を始めが、もともとエリート社員出身のAには、特捜部の捜査のプレッシャーが耐え難かったのであろう。

こうして捜査対象の被疑者が所在不明になってしまうと、検察独自捜査にとっては、大変苦しい局面になる。全国の都道府県警に指名手配をして協力を求めることができる警察とは違い、検察は所在不明になった被疑者の行方を追うことには制約がある。

しかし、被疑者の逮捕、本格的捜査が予定され、応援検事まで確保している場合に、捜査をあまり先延ばしすることはできない。つのる焦燥感の中で、そのときの主任検事が命じたのは、所在不明となった被疑者の家族・親類縁者を片っ端から呼び出して、「かくまっているのではないか」と疑って、徹底的にいじめるというやり方だった。それを徹底していけば、そのプレッシャーを受けた家族、親類縁者が、積極的に心当たりに連絡することで、どこかで被疑者の所在が明らかになって、通報してくるのではないか、という考え方だった。

確かに、それは、検察として取り得る手段の中では有効なものなのかも知れない。しかし、Aは、殺人犯人のように、本当に草の根分けても探し出さない犯罪者ではない。要するに、その所在を明らかにしないといけないというのは、「検察の都合」に過ぎないのだ。

私も、その「家族、親類縁者いじめ」の取調べに駆り出された。上司の指示・命令を受けてやらされる仕事の中で、これほど気の進まないことはなかった。

検事になって最も惨めな一日
ある日、主任検事から、所在不明の被疑者Aの従弟を呼び出して取り調べるようにとの指示を受けた。「前日にX検事が呼び出しの電話をかけたが、どうしても都合が悪いと言って来なかったやつだ。何か隠しているから来たくないんだろう。徹底して締め上げろ」という話だった。

私が電話をかけたところ、Aの従弟のB氏が出た。東京地検特捜部の検事であることを告げ、「Aさんのことでお伺いしたいことがあるので、明日、東京地検まで来てもらえませんか」と言うと、「Aとはもう何年も会っていません。何も知りません。どうしても行かなければいけませんか」と言ってきた。「それでも、どうしても直接お伺いしたいことがあるのです」と言うと、「では、行きます」と言ってくれた。

翌日の朝、霞ヶ関の東京地検に出向いたB氏は、私の「取調べ」が始まるなり、淡々と話し始めた。

「一昨日の夜も、X検事から電話があって、明日東京地検に来てくれと言われました。私が、仕事があって無理ですと言うと、『お前はAの行き先を知っているだろう。嘘をついてもわかる。隠しているから調べに応じたくないんだろう。隠したりしていると捕まえるぞ。』とさんざん脅されました。ちょうど、我が家では、子供にいろいろ大変なことがあって、とても深刻な家族会議をしていた最中でした。中学生の息子がイジメで登校拒否をしています。それに加えて、一昨日、小学生の息子が、重い心臓病だということがわかって、私たち家族はどうしたら良いんだろうと、目の前が真っ暗になって、そこに、夜の10時過ぎにX検事から電話があったのです。どうしても都合が悪いからと言って、東京地検に行くのは一日待ってもらいました。そこで、昨日、また電話がかかってきた。それが、検事さんからでした。私が検察庁に呼び出されたということで、今朝出てくるときに、女房が取り乱していて、私が逮捕されるんではないかと心配で頭がおかしくなりそうだと言っていました。」

私が、その話を聞いて驚き、黙っていると、Bはさらに言葉を続けた。

「私は、多摩市役所の職員として、20年余り仕事をしてきました。人から後ろ指を指されるようなことをしたことはありません。もし、私がAのことで何か知っていたら、すべてお話しします。でも、何も知りません。生意気なことを言うようですが、私も、少しばかりですが国にも市にも税金を納めている市民です。どうしてこういう目に遭わされなければならないんでしょうか。」

私は、このときほど、恥ずかしく惨めな思いをしたことはなかった。自分がやっていることは人間のやることではないと思った。

私は、すぐに、Bの自宅に電話をかけて、Bの妻と話をした。「何も心配することはありません。ご主人に何か疑いがかかっているということではありません。こちらの都合で、どうしても今日、一日、こちらにいてもらわないといけないのですが、まったく心配は要りませんから安心してください。今日の夜にはお返しします。今日だけで、明日以降は来てもらうこともありません」

そして、Bには「あなたから聞くことは何もありません。でも、どうしても、我々の組織の内部的な問題で、今日一日、この建物にいてもらわなければならないんです。待合室で待っていてください。時折、部屋に入ってもらいます。夜には帰ってもらいますから」

私は、昼と夕方のそれぞれ、主任検事に取調べの状況を報告した。

「しぶとい奴です。さっきからガンガンやってるんですが、何も話しません。本当に何も知らないのかも知れませんが、もう少し頑張ってみます」と真っ赤な嘘をついた。

主任検事に評価してもらおうなどという気持がまったくなかったことは言うまでもない。私が恐れたのは、私の「取調べ」が生ぬるいという理由で、B氏の「取調べ」がX検事に担当替えになることだった。とにかく、一日で終わらせなければならない。そのためには手段を選んでいる場合ではなかった。

その日のことは、私にとって衝撃だった。~中略~しかし、この特捜部での応援勤務の経験によって、むしろ、それまで、ある種の「憧れ」すら持っていた特捜部という組織の権力行使の方が、その使い方によっては恐ろしい弊害を持つものであることを実感したのが、そのときのB氏の取調べであった。

ゼネコン汚職事件での冤罪に関する実体験
この時、応援検事として初めて特捜事件の捜査に関わった時の経験で、私は、特捜部の捜査が、必ずしも正義ではないということを強く認識させられることになった。そして、その数年後、正式に特捜部に所属し、特捜検事として関わった「ゼネコン汚職事件」で、私は、特捜捜査が「不正義」そのものであることを実体験することになる。『検察が危ない』(ベスト新書:2010年)で次のように述べている。

事実無根の贈賄自白調書
そして、もう一つの三井建設から梶山静六前自民党幹事長への一〇〇〇万円のヤミ献金疑惑については、一月九日、同じく『朝日新聞』が朝刊で、「三井建設、梶山氏側へ一〇〇〇万円支出」と報じた。「竹内前知事が、同県内に計画されている緒川(おがわ)ダムなどの公共工事をめぐり、地元茨城二区選出で前自民党幹事長の梶山静六代議士の側から、三井建設の受注に便宜を図るよう要請を受けたことがある、と周辺関係者に話していることが、八日明らかになった。竹内前知事は東京地検特捜部にも同様の供述をしている模様だ。関係者によると、緒川ダムの受注でゼネコン各社による激しい競争が展開されていた一九九一年春ごろ、三井建設から梶山氏側あてとして一千万円が支出されていたという。」というものだった。

そして、数日後、朝日新聞は、同県が計画している緒川ダムの建設工事について「一九九一年初め、当時の県土木部幹部らに対し、三井建設にも受注させるよう示唆した」と周辺関係者に話していたことが十二日、明らかになった。東京地検特捜部にも同様の供述をしている模様だ。」と報じ、その直後、特捜部が三井建設の関係者の「一斉聴取」を開始したことを報じた。三井建設の某役員が梶山静六代議士に1000万円を渡したことを三井建設関係者の供述で裏付けようとするものだった。

その後、新聞、テレビ、週刊誌等がこの疑惑を報道し、臨時国会と通常国会の会期に挟まれた「空白の一日」の一月三〇日が梶山逮捕のXデーだなどとまことしやかに語られ、その当日には、検察庁周辺に新聞記者、カメラマン等が大挙して押し掛ける騒ぎとなった。世間の関心はこの問題に集中し、梶山逮捕の「Xデー」のために検察庁周辺には四六時中マスコミが張り込むという事態になった。

しかし、その後、特捜部の係官が議員会館に出向いて議員の面会簿を調査したと報じられた頃から風向きが大きく変わった。議員会館の面会簿からは、1000万円の授受があったとされる日の前後には面会の事実が確認できなかったことが、その事件の捜査に関わっていなかった私にも聞こえてきた。特捜部内は沈痛な雰囲気に包まれていた。

そして、一九九四年一月三一日、日経新聞が、「三井建設、元役員、1000万円を着服と供述」と報じた。

『長年にわたり同社の「業務屋」として政界へのヤミ献金などに携わり、一千万円を同社から引き出して梶山代議士側に届けたとされていたこの元取締役が、最近になって「問題の一千万円を着服し、遊興費などに充てた。弁済したい」などと供述。さらに一千万円が会社から引き出されたのとほぼ同時期に、この元取締役の金融機関の口座に一千万円とほぼ同額の金を入金していた、という。』

こうして三井建設から梶山議員への1000万円の供与疑惑は事実無根であったことが明らかになった。この着服の事実に関しては、その役員が業務上横領の事実で立件され、起訴猶予とされた。

同年3月7日付の『読売新聞』は、この事件の捜査経過について、以下のように報じている。『ゼネコン汚職の捜査で、予想外の経過をたどったのが、三井建設から前自民党幹事長・梶山静六代議士(67)あての名目で一千万円が支出されたことに絡んだ贈賄疑惑。 特捜部では、大物議員をめぐる疑惑だけに、最重要と位置づけ、年明けから多数の検事を投入、三井建設幹部の集中聴取などに乗り出した。しかし、捜査の過程で元取締役から「着服した」との供述が出て、一月末にはそれが表面化した。 贈賄か、着服か。特捜部では慎重に裏付け捜査を進め、元取締役の供述の信用性を確かめるため、取り調べにも複数の検事があたったという。着服の事実が濃厚となるにつれ、「政界ルートはつぶれた」との悲観的な声も捜査幹部から出たほど』

結果的に事実無根であることが明らかになった「梶山代議士への1000万円の供与」についてはその役員の詳細な「贈賄自白調書」が作成されていた。もし、偶然に、自白で授受があったとされていた日の前後に役員が議員会館で梶山氏に面会していたら、「梶山逮捕」は現実のものになっていたかも知れない。

私は、梶山代議士への贈賄事件の捜査断念の後に、「贈賄資金を着服した役員」の業務上横領事件の取調べを担当し、それまでの経過について詳しく話を聞いた。その役員の、それまでに作成された調書を見たところ、議員会館での1000万円の現金授受という「全くの架空の事実」について、授受の位置関係についての図面を含む詳細な供述調書が作成されていた。一度「ウソの自白」をすると、特捜部側は何とか事件を立件しようとしてストーリーが固められていき、自白を引っ込めることができなくなるという「冤罪」の構図そのものだった。

特捜検察と司法メディアの癒着
そして、このような特捜捜査について、全く疑問を持たず、捜査の展開をめぐってスクープ合戦を繰り広げていたのが「司法記者」だった。彼らの殆どは、特捜部の捜査に対する批判的な視点は全くなかった。その中で唯一、特捜捜査の問題について私と認識を共有していたのが、読売新聞のY記者だった。彼とは、ゼネコン汚職事件に限らず様々事件について「ストーリーありき、供述調書をとることがすべて」という、事実を解明する機能をほとんど果たさない特捜捜査と、それに対して批判機能を全く果たせない司法メディアについての認識を共有していた。

私は、そのような特捜捜査の内実や、司法記者との関係をフィクションで描くことができないかと考えて書き始め、その17年後に、ようやく推理小説として完成したのが、「司法記者」(講談社:2011年、講談社文庫:2014年)である。「由良秀之」のペンネームで書いたこの小説は、2014年にWOWOWドラマW【トクソウ】でドラマ化された(主演:吉岡秀隆、三浦友和)。

「平成の次の時代」に向けての日本社会の重要な課題
検察庁では、日々、膨大な数の一般刑事事件が適切に捜査・処理されており、そういう意味で、検察が、基本的に「刑事司法の正義の実現」に関して、その役割を果たしていることは疑いのないところだ。しかし、組織内部ですべての意思決定・判断が行われ、組織として一たび誤った判断をしてしまうと、組織内で是正することが困難になるというのが検察組織に関わる根本的な問題であり、それが典型的に表れるのが、検察自らが事件を立件し、被疑者を逮捕・起訴する、特捜部の捜査だ。私は、このような実体験に基づき、「検察の判断は、特に特捜事件については、正しいとは限らない」という認識から、これまでも多くの事件で捜査・処分に対する批判的な見解を述べてきた。

そして、特捜捜査に内在する危険性が、国際的な経営者の逮捕・起訴という形で現実化し、国内外に大きな影響を与えているのが今回のゴーン氏の事件だ。同氏の逮捕以降、特捜捜査に重大な問題があることを徹底して指摘し続けてきたが、事件は、1月11日の特別背任事件等での追起訴で一つの節目を迎え、この3連休明けにも出される裁判所の保釈の可否の判断を待っている状況だ。

仮に、保釈が認められなければ、凶悪事件でもない、経済事犯での身柄拘束が果てしなく続くという異常な「人質司法」に対して国際的な批判を受けることは必至だ。JOC竹田会長自身は、フランスで12月10日に予審判事の取調べを受けたことを認めており、その日に、予審判事の権限で逮捕される可能性もあった。フランス司法当局のJOC竹田会長への捜査が、被疑者の身柄拘束に対して慎重に進められていることと比較しても、日本の当局の、ゴーン氏に対する身柄拘束のやり方の異常性が際立つことになる。

しかし、裁判所が、「検察追従の姿勢」の呪縛から離れて正当に判断すれば、保釈が許可される可能性は十分にある。【ゴーン氏、早期保釈の可能性~「罪証隠滅の現実的可能性」はない】でも述べたように、ゴーン氏について「罪証隠滅のおそれ」があるのかという点を、最高裁判例等に照らして厳密に判断すれば、否定されるのが当然だ。それは、海外メディアの批判を恐れたものでもないし、フランス当局の圧力によるものでもない。

ゴーン氏の逮捕以降、多くの海外メディアからの取材を受けたが、日本のメディアからの取材は少なく、特に、新聞、地上波テレビの社会部、司法クラブ関係の記者からの取材は皆無に等しい。そうした中、こうした検察の問題に常に関心を持ち、私に発言の場を与えてくれた「平成のジャーナリズムの巨人」田原総一朗氏の番組「激論クロスファイア」(BS朝日)に、今日(1月13日)の午後6時から生出演する。

【「日産・ゴーン氏事件」に表れた“平成日本の病理”】でも述べたように、ゴーン氏事件に表れた企業ガバナンス・透明性、検察の在り方、事件報道という問題が、「平成の次の時代」に向けての日本社会の重要な課題であることを、しっかり話すこととしたい。

(記事引用)













日産前会長特別背任事件-適時開示の訂正と法人の「損害」
山口利昭 記事2019年01月13日 00:00
1月11日、東京地検特捜部が日産の前会長さんを会社法違反(特別背任)で追起訴した、とメディアで報じられています。また、併せて処分保留とされていた金商法違反(有価証券報告書の虚偽記載)についても、法人としての日産とともに追起訴したそうです。日産は、前会長さんを告訴したこと及び法人としての日産が追起訴されたことを受けて、同日、適時開示のリリースを出しました。

しかしながら、どういうわけか日産は午後4時30分のリリースを、わずか40分後である5時10分に訂正しています。この訂正について、同日の日経新聞ニュースは

「有価証券報告書に虚偽の内容を記載したことは証券市場における開示情報の信用性を大きく損なう」「事案の背景に存在するガバナンスの不全を重大な問題ととらえている」などの記載を削除した

と報じています。この報道から、私は日産自らの民事賠償責任の追及を容易にするような記載は好ましくないとして慌てて訂正されたのではないか、と推測いたしました。

しかし、ある金融関係の方から、当ブログにコメントをいただきました。その方は、別の箇所が訂正されていることに着目して、この告訴内容(≒起訴事実)では、そもそも新生銀行との契約上の地位を(前会長資産管理会社から日産へ)移転したとしても、日産には損害が発生する余地はないので前会長さんは無罪である、との意見をいただきました。意見を頂戴した方が特定されないように配慮して、やや長いのですが、以下にご紹介いたします。

日産自動車が東証の適時開示サイトに、2019年1月11日付で「本日の起訴について」というリリースを行っています。内容は起訴と同日付で刑事告発を行ったというものです。16:30にリリースを行い、17:10にその「訂正」を行っていますが、見比べると「訂正」というより「情報隠ぺい」と言うべき内容になっています。16:30版では何について刑事告発を行ったかが記載されていますが、17:10版では刑事告発の詳しい内容が全て削除されています。株式市場では情報で相場が乱高下するので、情報を流す会社には重い責任があるのですが、これでは、訂正前と訂正後のどちらが本当なのか分からない状況です。是非見比べていただきたいと思います。

さて「訂正前」によれば、特別背任の対象となるデリバティブ取引は「クーポンスワップ契約」とありますが、これでは「日産に損失は発生しなかった」ばかりでなく、「どう転んでも日産に損失が発生する余地はなかった」ということになります。

「クーポンスワップ契約」とは「毎月一定額の円を一定額のドルに固定レートで交換することを一定期間(12か月とか24ヶ月とか)行う契約」で、ゴーン氏が言っていた通り「給料をドルで受け取るため」であって、投機のためではなかったことを裏付ける内容となっています。そしてクーポンスワップ契約の「評価損」とは、「円高になった場合、もっと少ない円で同額のドルを買うことができたのに、それができず儲けそこねた金額」のことを言い、「儲けそこねた金額」ですので、単なる「評価上」「観念上」の金額です。1ドル=100円のスワップを組んだ後、相場が1ドル=80円になった場合、「80円でドルを買えるのに、100円で買うことになって20円損したね」というのが「評価損」です。「評価損」を支払う必要はなく、満期まで毎月の交換を行えばそれで終わりです。もちろん「1ドル=100円で満足しているので、20円損したとは思わない」と言えばそれまでの話で、クーポンスッワップの「評価損」というのは「気もちの問題」「評価上の問題」です。

では、銀行がなぜ「評価損」を問題にするのかというと、「中途解約」をされた場合、銀行に損失が発生するためです。1ドル=80円のときに、ゴーン氏に1ドル=100円でドルを売れるなら、銀行としては20円儲かっているのですが、中途解約されると20円が消えてしまいます。このため「中途解約」は禁止になっていて、解約した場合「違約金」として1ドル当たり20円を払わせることになっています。つまり「違約金」が「評価損」と同額になっているのです。銀行としては「中途解約しないこと」の保障が欲しかったのであって、そのために日産の名前が使われたのです。

日産から見れば、「中途解約がなければ、違約金=評価損の支払い義務はない」「ゴーン氏が中途解約しないことを知っている」ので、「何のリスクもない取引」「どう転んでも損が出ない取引」となります。検察が「中途解約すれば日産に損が出る可能性があった」と主張したところで、ゴーン氏が「給料をドルに変える取引なので、中途解約するつもりは一切なかった」と証言すれば、無罪判決になるとしか思えません。

いままで、日産前会長さんの事件で、新生銀行さんと締結していた契約が「クーポンスワップ契約」と特定されていた報道記事をグーグルで検索しましたが見当たりませんでした。たしかに日産の訂正リリースでは、この告訴事実に関する文言は削除されています。私は金融実務に精通しているわけではありませんが、上記に解説されている内容や契約の経済的合理性は理解いたしました。前会長さんが日本円で受け取る報酬をドルに換える契約ということなので、そもそも前会長さんが中途解約を申し出る動機はないかもしれません。また、損害の発生する余地がないのであれば、①当時の日産の取締役会において利益相反取引に関する承認決議がなされなかったこと、②日産への契約切り替えについて、新生銀行が悪意なく契約上の地位変更手続きを進めたことも納得がいきます。
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もちろん、特別背任に関する二つ目の起訴事実(中東の知人への16億円の拠出)については別の議論が必要だと思いますが、一つ目の起訴事実について損害の発生可能性さえないとなりますと、特別背任の実行行為の面でも、また主観的要件の面でも検察側の立証のハードルは(予想どおり?)相当に高いように思えるのですが、いかがでしょうか。
(記事引用) 



















【暗闘 ゴーン事件】(上)勾留失効直前…ドバイの証言
2019.1.11 22:57産経新聞
 世界一の高さを誇る超高層ビルや世界最大級のショッピングモールで知られる中東屈指の観光都市、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。昨年12月20日、日産自動車の関係者は、子会社「中東日産」の幹部と向き合っていた。

 関係者は、日産の前会長、カルロス・ゴーン(64)の不正を調査する社内の内偵チームから重要な密命を帯びていた。ゴーンの指示で平成21~24年、中東日産からある会社に支出された計1470万ドル(約12億8400万円、現在のレートで約16億円)の趣旨の「解明」だった。

 支出先はゴーンの長年の知人でサウジアラビア有数の実業家であるハリド・ジュファリが経営する会社。名目は日産車の「販売促進費」などとなっていた。

 幹部は、日産関係者に語り出した。「ジュファリの会社に販売促進などの活動実態はありません。あの1470万ドルは支払う必要のない金でした」

 その頃、ドバイから約8千キロ離れた東京・霞が関の検察庁は激震に見舞われていた。東京地検特捜部が自身の役員報酬を過少に記載したとして金融商品取引法違反容疑で再逮捕したゴーンの勾留延長請求を東京地裁が却下したからだった。

 テレビのニュースは、近く保釈される可能性があると速報した。身柄拘束を解かれれば、口裏合わせなど証拠隠滅の恐れがあるため、「保釈されれば捜査終結だった」(捜査関係者)。
9 毎日19111

 特捜部は11月19日に金商法違反容疑でゴーンを逮捕して以降、「会社の私物化」を象徴する犯罪の立件を目指してきた。狙いを定めたのがジュファリを含めた中東の複数の知人側に流れた資金。だが時間が足りなかった。そこで10年前のリーマン・ショックで生じた私的投資の評価損約18億5千万円を日産に付け替えた容疑だけでの立件を検討。ただ10年前と古く、日産に実損も与えていなかった。このため「これだけでは国内外から批判されかねない」(捜査関係者)と検察上層部から「待った」がかかっていた。

 約30億円を拠出し、損失の信用保証に協力したジュファリ側への支出を容疑に加えることが逮捕状請求の許可条件。そのためには中東日産幹部の決定的な証言が必要だった。

 勾留の効力が失効する21日午前0時が刻一刻と迫っていた。特捜部長の森本宏(51)のもとに、ドバイから証言がもたらされたのは日が落ちた頃だった。証言を裏付ける書類などとともに調書の形に整え、会社法の特別背任容疑での逮捕状請求に至ったのは21日未明。薄氷を踏む捜査で事件の“第2幕”が上がった。

◇◇◇

 世界的な経営のカリスマへの捜査は当初から困難を極めた。きっかけは日産の内偵チームのメンバーの一人が、ゴーンが22年にオランダに投資目的で設立させた子会社「ジーア」の資金操作に疑惑の目を向けたことだった。ジーアには日産から50億円超が出資され、タックスヘイブン(租税回避地)のペーパーカンパニーを通じ、ブラジルやレバノンで高級住宅が購入され、ゴーンや家族が無償で利用していた。

 昨年春頃、この投資資金の不正流用疑惑に関わった外国人執行役員が幹部らに実態を打ち明け、チームは調査を本格化させる。

 ただゴーンは20年近くにわたり日産のトップに君臨し、社内にも「ゴーン派」が多数存在。「ゴーンに情報が抜ければ終わり」(関係者)のためチームはわずか4人で行動した。司法取引が導入された6月頃、特捜部に情報を持ち込んだ。司法取引は他人の犯罪を明かす見返りに刑事処分を軽くするもので、組織トップの犯罪を摘発することが期待された制度。ゴーンの訴追には打って付けだった。

 外国人執行役員が「協議開始書」に特別背任容疑の「被疑者」として署名し、特捜検事の任意聴取には、弁護人として検事出身の「ヤメ検」が同席した。

 特捜部が特別背任での立件を検討したジーアの疑惑は不動産の名義が日産のままで、帰属や資産評価など立証のハードルが高く見送られた。代わりに浮上したのが「報酬隠し」だった。株主らからの高額報酬との批判を恐れ、22年から8年にわたり総額90億円超も過少に記載していた。

 これに深く関与していたのが、10年以上ゴーンに仕えた元秘書室長だった。捜査関係者が「ゴーンのあらゆる不正を把握するキーパーソンでゴーンそのもの」と表現するほど。捜査協力が必須だった。ただ対応を誤ればゴーンに情報が漏れ、事件が潰れる。このため特捜部が接触を図って説得し、司法取引に合意したのは逮捕前の捜査の終盤だった。

 ゴーンの逮捕は、世界に衝撃を与えたが、捜査には思わぬ逆風が吹いた。有価証券報告書に虚偽の報酬額を記載したという容疑が「形式犯」だとの見方がなされたからだ。役員報酬の虚偽記載での適用事例はなく、構成要件の一つである「投資判断への影響」にも疑問が投げかけられた。

 特捜部が、日産に実害を与えた「実質犯」の特別背任での立件にこだわったのは、こうした批判をかわす狙いもあったとみられる。「会社が食い物にされた」(幹部)とみる日産側も、会社が被害者になる特別背任での立件を強く求めていた。特捜部は日産の内偵チームと水面下で連携し、年末に向け「中東ルート」の捜査を加速させていった。

◇◇◇

 「検察官はもう少し慎重に、よく証拠を見て捜査を進めてもらいたかった」

 ゴーンの弁護人を務める元東京地検特捜部長の大鶴基成(63)は1月8日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で、多くの海外メディアを前に記者会見し、かつての後輩たちの捜査に苦言を呈した。

 その日、ゴーンは勾留理由開示の手続きで東京地裁の法廷に立ち、「私は無実。不当に勾留されている」と初公判さながらに訴えた。大鶴はその補足説明として会見したのだが、最大の目的は海外メディアへの発信だった。

 裁判所が容疑者の勾留理由を公開の法廷で説明する勾留理由開示は保釈に直結しないため請求率は1%にも満たない。大鶴も報酬過少記載事件での勾留の際は「意味がない」と否定的だったが、年明けになって方針転換した。その狙いを、ある検察幹部は「早期保釈に向け、裁判所に圧力をかけるため」と断言する。

 特捜部が特別背任事件の捜査着手を前倒しせざるを得なくなった勾留延長の却下は「検察幹部が軒並み冷静さを失うほど衝撃的だった」(検察関係者)。翌日、地裁は却下理由の要旨をメディアに明らかにしたが、ある捜査関係者は「証拠関係を明らかにしており、発表自体が捜査妨害だ」とくさした。

 「さすがに却下はないと思っていた。そこまで『外圧』に弱かったとは…」。多くの検察幹部は地裁の異例の判断の背景に、海外メディアの過熱報道があったとみる。日本の刑事司法制度について「長期勾留」「取り調べに弁護士が立ち会えない」などと批判が向けられてきたからだ。

 勾留理由開示手続きや、その後の勾留取り消し請求と、立て続けになされた裁判所への働きかけは、大鶴を含めた弁護団も裁判所の「特性」を十分意識しているからだろう。

 こうした弁護側の情報戦略に、ある検察幹部は「ゴーンの言っていることは嘘ばかり。マスコミは弁解を垂れ流すだけで利用されているのに気付いていない」といらだちを募らせる。

 一方の大鶴も「検察のマスコミへのリークがひどい。本件の特別背任容疑と関係ないことばかり流す」と漏らし、検察を批判する。

 前代未聞の事件は検察側、日産側、弁護側の思惑に、裁判所も巻き込みながら続いていく。
=敬称・呼称略

 ゴーン被告をめぐる一連の事件は11日、特別背任罪で起訴されたことで節目を迎えた。異例ずくめの捜査の舞台裏や日産内部で起きていた「暗闘」を探る。

(記事引用)

2019/1/13付 転載
【暗闘 ゴーン事件】(下)仏政府乗っ取り防ぐ「国策」
2019.1.12  22:02 産経
 昨年11月19日午後3時過ぎ、成田空港に降り立った日産自動車の元代表取締役、グレゴリー・ケリー(62)=金融商品取引法違反罪で起訴、保釈=は日産が準備した車で滞在先のホテルへ向かっていた。

 前会長、カルロス・ゴーン(64)=同罪、会社法違反罪で起訴=の側近で、米国に在住し、年に数回しか来日しないケリー。数日前、日産の外国人執行役員から「取締役会でゴーン会長の退任後の報酬について話し合いたいので日本に来てもらえませんか」と電話があった。首の手術を12月7日に控え、最初は「どうしても、ということでなければテレビ会議でお願いしたい」と難色を示したが、執行役員は「どうしても」と食い下がった。

 執行役員が来日にこだわった理由はほどなく判明する。ケリーの乗った車は高速道路のパーキングエリアに止まり、待機していた東京地検特捜部の検事から任意同行を求められ、逮捕された。執行役員は、特捜部と司法取引に合意し、捜査に協力していた人物。ケリーはゴーンとの「同時逮捕」を狙う特捜部と水面下で連携した日産側が仕掛けた“罠(わな)”にかかったのだ。

◇◇◇

 ゴーンが問われた金商法違反罪は、毎年の報酬約20億円のうち、有価証券報告書に記載するのは約10億円だけにし、残りの約10億円は退任後に別の名目で受け取るというものだ。「報酬隠し」の総額は8年で約91億円に上った。
 ゴーンは自身の報酬額について、フォードやゼネラル・モーターズなどの自動車大手4社から引き抜きを受けた際に示された金額を参考にしているとし、「自分の市場価値」として記録していたという。検事の取り調べでも「自分にはそれくらいもらう価値がある」と胸を張った。

 約15年前の取締役会で、すでに報酬額への強いこだわりを見せていた。報酬の3割増額を提案したゴーンに対し、出席者から「お手盛りが過ぎる」と異議が出た。ゴーンの顔がみるみるうちに赤くなった。

 「業績で貢献したんだから、これくらい当たり前だろ!」

 早口の英語でまくし立てるゴーンに圧倒され、場は静まり返った。ある幹部は「並みの怒り方ではない。獣のような顔で怒鳴り立てていた」と振り返る。

 幹部がその剣幕(けんまく)を目撃したのは1度ではない。2度目は出自について、言及された時だったという。

 祖父はレバノンからの移民だったというゴーンはブラジルのアマゾン川流域の田舎町で生まれた。自著によると、高温多湿で蚊に悩まされる厳しい環境で育ち、2歳の時には井戸水を飲んで生死をさまよった。

 外食ではラーメン店や焼き鳥店に通う庶民性を見せるが、幹部は言う。「とにかく強欲でカネへの執着は異常だった。出自へのコンプレックスも強かった」

 ゴーンは自著で「数字は多様な言語、文化の中で育った私が考え抜いた共通の言語だ」と書く。業績追求の果てにたどり着いた唯一のアイデンティティーが、報酬額だったのだろうか。

◇◇◇

 仏ルノーを経て平成11年6月、業績が悪化していた日産の最高執行責任者(COO)に就任したゴーンはわずか1年でV字回復を果たし、13年に最高経営責任者(CEO)となる。17年には日産株を43%持つルノーの社長兼CEOとなり、日産トップでありながら日産を監視する側のトップになった。元幹部は「ルノーを治め、日産の株主総会を動かす力を持ったことで独裁者になった」と話す。

 だが社内には「ルノーから日産を守る盾としては報酬20億、30億の価値がある」(日産関係者)との声もあった。ルノー株を15%持つ仏政府は26年、株主の議決権を強化する「フロランジュ法」を制定。ルノーを通じて日産への支配を強めつつあったが、ゴーンは27年に仏政府が日産の経営に関与しないことで合意を得るなど、日産の独立性を重視する姿勢に、社内でも評価する支持者がいた。

 ところが昨年2月に潮目が変わる。ルノーCEO留任の条件としてゴーンが仏政府に「日産との不可逆的な関係づくり」を約束したとされたからだ。不可逆的関係とは「経営統合」を意味し、社内ではついにゴーンがルノー側に回ったと解された。「この時、社内でゴーンを切る覚悟ができたのだろう」(日産OB)

 ちょうどその頃から、不正を調査する内偵チームが極秘の活動を加速させていく。背景には日本政府の意向も見え隠れし、ある政府関係者は「不況にあえぐ仏政府が技術力と雇用欲しさに日産を乗っ取ろうという状況を(日本の)経済産業省が問題視していたのは事実」と明かす。

 昨年10月、ゴーンに重用されてきた日産社長兼CEOの西川(さいかわ)広人に調査結果が報告されたとき、もはや西川に選択肢はなかった。

 先の政府関係者はこう続ける。

 「技術力と雇用を流出させないという意味では事件は国策の側面もあった」
=敬称・呼称略

 (連載は、市岡豊大、山本浩輔、吉原実、松崎翼が担当しました)

(記事引用)

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竹田JOC会長の「それみたことか」記事

つい先ほど書いたメイン記事の裏書きが「天木直人」氏の記事で証明された。

上の記事を「ドバイの証言」を詳細に読んだ結果思うことは、「なんだゴーンは近年稀に見るゆすりたかりの大ペテン師大嘘つき(特捜見解)にメディアは完全に出し抜かれている。と。

比喩として適切とは云い難いが「日産はいいカモ」だった、と結論づけるようなその記事だった。はたしてそうか?

と疑心暗鬼に他のネットを探っていると
天木直人氏の記事を読んですべて氷解した。

薩長と徳川の終わらない戦いが、いままたここに火の手を上げた、という超一級のドキュメントに、キーボードを打つ指先が震える。

他のネット記事を読むかぎり「我関せずガラパゴス」世相を反映して「ああ日本はヘイワである」ことの愛おしさをつくづく感じる夕暮れ時だった。

フランス司法当局による竹田JOC会長贈賄容疑捜査...

天木直人2019年01月12日 14:32 記事天木直人のブログ

フランス司法当局による竹田JOC会長贈賄容疑捜査の衝撃

 ゴーン事件が新たな展開を見せた。
 仏紙ルモンドなどが、竹田JOC会長を東京五輪招致の際の贈賄容疑で捜査していると報道したからだ。
 政府関係者はゴーン事件とは無関係だ、単なる偶然だ、などと冷静を装っているが、明らかにゴーン事件に対する日本の司法当局への圧力だ。

 司法当局の背後にある安倍政権に対するメッセージだ。
 
 いよいよ日本はゴーン事件で窮地に立たされることになる。

 竹田会長の贈賄容疑捜査報道の衝撃は二つある。

 ひとつは、贈賄そのものの有無だ。

 竹田会長が贈賄していたなら、それは日本政府が贈賄していた事になる。
 その場合はもちろん東京五輪は吹っ飛び、安倍政権は総辞職せざるを得ない。
 しかし、この問題は、すでに2年前にコンサルタント契約に基づいた正当な対価として政治決着している。
 そもそも、オリンピックの招致が買収されることは周知の事実だ。
 そんなことを認めてしまえば、オリンピック自体が成り立たなくなる。
 だから、竹田会長に関する贈賄容疑は政治的に成り立たない。

 それを知っていながら、今になってフランス司法当局が捜査を続けていると突然報道されたということは、明らかにゴーン事件に対する仏側の報復的脅しなのである。

 ただでさえ、日本の捜査の人権軽視について外国の批判が高まり始めた時だ。

 いよいよ検察は追い込まれる事になる。

 そこで問題になるのが、安倍政権とゴーン事件のかかわりである。
 安倍政権がゴーン逮捕を指揮し、積極的に動いたということは、さすがにあり得ないだろう。

 もしそんなことをしていたら、それがばれた時点で安倍政権は即、終わりだ。
 問題は、安倍政権が今回の検察の一連の捜査について、事前通報を受け、それを明示的、あるいは黙示的に、承認していたかどうかだ。
 そして、これまでの日本の政権と検察の関係から考えれれば、検察が政府に一切連絡せずに独断で行ったとは考えられない。

 ましてや、今の、安倍・菅政権の下では、検察・警察・司法は完全に安倍政権の顔色をうかがって動いている。
 もし今度のゴーン事件に安倍政権が、たとえ暗黙的にせよ、関与していることがわかれば、その時こそ安倍政権は国際批判の矢面に立たされる事になる。
 そして、その背後に米国の影がちらつけば、国際問題にまで発展する。

 いよいよ検察は追い込まれて来たということだ。

 その深刻さを、きょうの朝日新聞が見事に認めている。

 つまり、検察から情報をもらってスクープ報道し、以来、一貫してゴーンを悪者にして検察寄りの記事ばかり書いてきた朝日が、きょう1月12日の一面トップで、検察捜査の独善性を批判し始めたのだ。
 この朝日の手のひら返しの裏切りこそ、ゴーン事件が世界から批判の目で見られ始めたことへの危機感の表れなのだ。

 しかし、検察はいまさらゴーン追及の手を緩めるわけにはいかない。

 そんなことをすれば安倍政権からやめろと指示があったことを認める事になる。

 検察は進むも地獄、退くも地獄だ。

 そして、それはとりもなおさずゴーン事件で安倍政権が置かれている苦境でもある。
 折からあらゆる外交の行き詰まりが表面化してきた。

 それに加えてゴーン事件だ。

 待ったなしに外交の安倍の真価が問われている(了)

(記事引用)

同趣旨 郷原記事

竹田会長「訴追」で東京五輪の危機を招いた政府・JOCの「無策」
郷原信郎(記事) 2019年01月12日 08:56
 フランスの司法当局が、日本オリンピック委員会(JOC)竹田恒和会長を東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、「東京五輪」)招致に絡む贈賄容疑で訴追に向けての予審手続を開始したと、仏紙ルモンドなどフランスメディアが報じている。
 カルロス・ゴーン氏が特別背任等で追起訴された直後であり、この時期のフランス当局の動きがゴーン氏に対する捜査・起訴への報復との見方も出ている。
 このJOCによる五輪招致裏金疑惑問題については、2016年にフランス当局の捜査が開始されたと海外メディアで報じられ、日本の国会でも取り上げられた時点から、何回かブログで取り上げ、JOCと政府の対応を批判してきた。

(記事部分引用)




それはまったく、このサイト名サブタイトル「Galapagos Japas 」そのものであると沈思黙考にふけっているところだ。 筆者



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動画第3弾「カルロスのフランスバカンス」
















ゴーン氏、早期保釈の可能性~「罪証隠滅の現実的可能性」はない
郷原信郎 サイト 2019年01月11日 13:50
1月8日午前、東京地裁で開かれた勾留理由開示公判で、カルロス・ゴーン氏は、自身の言葉で、「私は無実だ。」「不正をしたことはなく、根拠もなく容疑をかけられ不当に勾留されている。」と主張し、勾留事実についても、具体的な反論を行った。そして、同日午後、大鶴基成弁護士らゴーン氏弁護団も記者会見を行った。元特捜部長・最高検公判部長の大鶴氏が「犯罪の嫌疑が全くないと確信している。」と明言したことは大きな意味があった。これまで、検察や日産側のリークによると思える「犯人視・有罪視報道」に埋め尽くされ、世の中の多くの人が「強欲ゴーン=有罪」のように決めつけていた状況にも変化の兆しが見える。

 今日(1月11日)、勾留延長満期となる特別背任で、検察は、ゴーン氏を起訴するであろう。そして、4回目の逮捕がない限り、そこで、事実上、捜査は終結することになる。

 そこで、最大の注目点となるのが、ゴーン氏の保釈が認められるかどうかだ。

 「保釈の見通し」に関する記者会見での大鶴氏の発言には疑問な点があった。特捜部長も務め、検察側で長く刑事事件に携わってきた大鶴氏だが、刑事事件での「検察との全面対決」では、弁護側の視点と検察側の視点とは大きく異なる。23年に及ぶ検察官としての経験から刑事手続は知り尽くしていたつもりだった私も、全面対決の初戦となった美濃加茂市長事件では、初めて経験することも多く、弁護人として役立てる資料・情報の収集に苦労をした。

「人質司法」と「保釈の見通し」についての大鶴弁護士の説明
 大鶴氏は、記者会見で、「人質司法」について、「一般的に言うと第1回公判までは保釈が認められないケースが非常に多い。これは人質手法などと呼んで弁護士は強く批判している。」などと述べた上、保釈の見通しについて、「この事件で第1回公判が開かれるまで少なくとも半年はかかるだろう」「日本の普通の保釈の実情から、普通一般的には特別背任を全面的に否認していると、少なくとも第1回公判までは東京地裁令状部は保釈を認めないケースが多い。それは一番弁護人が懸念しているところで、その話はずっとゴーンさんにもしているので、ゴーンさんもそれは非常に困ったことだと考えておられる。」などと述べた。

 しかし、この大鶴氏の説明には不正確な点がある。まず、「人質司法」についての大鶴氏の説明は、一般的な「人質司法」の意味とは若干異なる。「人質司法」とは、罪を認めて自白した者には身柄拘束からの解放が認められやすいが、罪を認めていない者には身柄拘束が続くという、「自白の有無で釈放・保釈の是非が決まるかのような刑事事件での身柄拘束」のことを言う。収賄等の事件で全面無罪を争った鈴木宗男氏が、検察官立証が終わるまで、437日間身柄拘束が続いた例もある。つまり、無罪主張をした場合、第1回公判後も検察官立証が終わるまで「罪証隠滅のおそれがある」という理由で保釈が認められないことを含めて「人質司法」と言うのである。

 大鶴氏は「第一回公判まで」ということを強調したが、第一回公判の前後で状況が異なるのは、被告人が罪状認否で公訴事実を全面的に認め、検察官調書に同意して、情状立証だけで早期に裁判を終わらせる場合、つまり、検察と争わない姿勢を示した場合だ。勾留理由開示公判で「私は無実」「不当な身柄拘束を受けている」と訴えたゴーン氏の場合、第一回公判でも「全面無罪」を主張するはずであり、その前後で状況が変わるとは思えない。

 大鶴氏は、ゴーン氏が特別背任で起訴された場合の「保釈の見通し」について、「人質司法」についての上記のような理解を前提に、第1回公判まで半年以上は保釈を認めない可能性が高いとの見通しをゴーン氏に伝えていると述べたが、最近では、「人質司法」の理由とされてきた「罪証隠滅のおそれ」の判断について、裁判所の姿勢が変化し、個別の事情を踏まえて具体的に判断する傾向がある。大鶴氏は、検察側で保釈を阻止した経験は豊富でも、全面否認事件の弁護人として被告の身柄奪還に全力を挙げた経験があまりないのかもしれない。

「罪証隠滅のおそれ」についての裁判所の判断の傾向
 「罪証隠滅のおそれ」について最高裁が重要な判断を示したのが平成26年11月17日の決定だ。痴漢事件で「被害少女への働きかけの可能性」が勾留の要件である「罪証隠滅のおそれ」にあたるかが争われた事例で、裁判官が勾留請求を却下した決定に対して準抗告裁判所が「罪証隠滅のおそれ」を認めて勾留請求却下を取り消して勾留を認めた決定について、弁護人が特別抗告した結果、「被害少女に対する働きかけの現実的可能性もあるというのみで、その可能性の程度について原々審と異なる判断をした理由を何ら示さず原々審の裁判を取り消して勾留の必要性を認めた原決定」を「違法」として取り消し、勾留請求却下を是認した。

 それまでも、下級審では、「罪証隠滅のおそれ」を個別具体的に判断して、勾留請求を却下したり、保釈を認めたりする裁判例があったが、最高裁が、そのような考え方を明確に認めたことで、「罪証隠滅のおそれ」があることは、「個別具体的に示される必要がある」として、保釈が認められる傾向が強まっている。

 私が、主任弁護人を務めた2014年の美濃加茂市長事件でも、逮捕当初から賄賂の授受を全面否認し、否認のまま起訴されたが、保釈請求を繰り返す中で、「罪証隠滅のおそれ」がないことを具体的に明らかにした結果、名古屋地裁は、4回目の保釈請求を却下した決定を取り消して保釈を許可した(起訴後39日目)(【藤井美濃加茂市長ようやく保釈、完全無罪に向け怒涛の反撃】)。このような全面否認の贈収賄事件での早期保釈は、昔では、あり得ないものだった。

 今回の事件では、東京地裁が、特捜部の勾留延長請求を却下するという、従来の特捜事件に対する裁判所の姿勢では考えられなかった判断を行うなど、身柄拘束の要件を厳格に判断する姿勢を見せていること、金商法違反で起訴されたケリー氏が、全面否認のまま既に保釈されていることなどから考えると、裁判所は、ゴーン氏の保釈請求に対しても「罪証隠滅のおそれ」の有無について、厳格に判断する可能性が高い。弁護人側が、保釈請求で、その点について具体的に説得力のある論証をすれば、早期の保釈の可能性も十分にある。

「ゴーン氏」について「罪証隠滅のおそれ」はない
 そこで問題になるのが、特別背任で起訴された場合、ゴーン氏について「罪証隠滅のおそれ」があると言えるのかだ。

 具体的に考えてみると、デリバティブの評価損の「付け替え」についても、サウジアラビア人への送金についても、ゴーン氏が保釈された場合に、日産関係者に対して、「口裏合わせ」を依頼することは考えられない。そもそも、ゴーン氏が、日産の社内に影響力を持っていたのは、経営トップとして社内で強大な権限を持っていたからである。代表取締役会長を解職され、経営トップの座から引きずり降ろされたゴーン氏の影響力は大幅に低下しており、日産役職員の事件関係者との間で「口裏合わせ」ができる状況ではない(しかも、日産経営陣は、ゴーン氏・ケリー氏やその弁護人との接触も禁止している)。

 唯一、「罪証隠滅のおそれ」が考えられるとすれば、日産から送金を受けた「サウジアラビア人の知人の実業家」」(会見では「E氏」)との間で電話等による「口裏合わせ」が行われる可能性である。しかし、そもそも、大鶴氏が会見で指摘しているように、検察は、そのサウジアラビア人の聴取をしないままゴーン氏を逮捕したのであり、現在も、検察はE氏の供述を得ていない。検察官が立証を予定している「証拠」が存在しないのであるから、その罪証を隠滅すること自体があり得ない。

 しかも、大鶴氏によれば、E氏は、弁護人に対して、ゴーン氏の勾留理由開示公判とほぼ同時期に、「日産自が販売代理店の問題を解決し合弁会社設立に道を開くのを助けた」「日産から受け取ったとされる1470万ドル(約16億円)は正当な報酬」とする声明を出している。(【サウジ実業家:日産からの16億円の支払いは正当-特別背任事件】)

 E氏の供述がゴーン氏の主張に沿うものであることがこの声明によって明らかになっているのであるから、E氏の供述をゴーン氏側から働きかけて有利に「変更」させる必要はない。

 これは、美濃加茂市長事件での「賄賂の授受」があったとされた会食の場の同席者(T氏)をめぐる状況と似ている。T氏は弁護人に対して「会食の場での現金の授受は見ていないし、席も外していない。」と説明し、ネット番組「ニコニコ生放送」にも出演して同趣旨の話をしていた。そのため、検察官も、T氏について「罪証隠滅のおそれ」があると主張をすることはできなかった。

「ゴーン氏」早期保釈の可能性は高い
 このように考えると、保釈請求に対して、いくら検察官が、ゴーン氏について「罪証隠滅のおそれがある」として必死に反対しても、E氏との関係で「罪証隠滅のおそれ」を認める余地はなく、それ以外に「罪証隠滅のおそれ」の具体的な可能性もないことを保釈請求で具体的に論証すれば、ゴーン氏の保釈が許可される可能性が高い。

 今日、特別背任で起訴され、再逮捕がなければ、今日中に保釈請求が行われるだろう。保釈請求をうけた裁判所から検察官への「求意見」に対して検察官の意見書が出されるのが今日の夜、保釈可否の判断は、週明けには行われることになるだろう。

 来週早々にもゴーン氏が東京拘置所から出てくる可能性は十分にある。

(記事引用)

画像 オリンピックサーフィン会場「一宮釣ゲ崎」奥に鎮座する「神洗い神社」すべてはこの地の歴史に刻まれている
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※現場の紙一重にいる熟達者、郷原氏の予想をまったく覆して、起訴有罪刑にいたる、という私の予想だ。

その詳細を書くほど法律の知識も経験もないが、社会世間の人間模様をつぶさに観察俯瞰してきた浅学の果ての結論である。

もちろんプロ中のプロ郷原氏の見立ては誰もが納得する世の厭世を余すことなく描いていて、寸分の狂いもない。

だからこそ、そこに付入る隙もあるはずと、いらぬ節介の老婆の戯言の一つや二つ・・・。

その昔、時代小説のプロットにあった「藤沢周平」たちの描いた江戸武士貧欲世界と無情階級は、いまの日本のネガティブ転写であると思うからである。




神格化していたゴーン氏を強烈批判する日本社会の「ヤバい経営感覚」
だから、この国はナメられる
加谷 珪一 gendai.ismedia.jp2018/11/28
日産のカルロス・ゴーン会長が逮捕された。国内では、ゴーン氏がいかに会社を食い物にしてきたかという話のオンパレードになっているが、現時点において、事件の内容はほとんど何も分かっていない。

仮にゴーン氏が会社を食い物にしてきた人物であったとしても、そうした経営者を、正規の手続きを踏まない形で追放したところで、問題が根本的に解決するわけではない。
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そもそも日産が経営危機に陥ったのは、当時の経営陣や従業員が会社を食い物にし、放漫経営を続けてきたからである。ゴーン氏も同じなのだとすると、首謀者が前経営陣や従業員からゴーン氏に変わっただけである。

一連の日産のスキャンダルは、日本企業のお粗末なガバナンス体制が生み出したものであり、ゴーン氏を逮捕したところで何も変わらない。

日産がルノーの軍門に下った理由は「放漫経営」
ゴーン氏が日産のトップに就任し、同社がV次回復を果たしたことで、同氏はカリスマ経営者としてもてはやされた。高い業績を残した経営者を評価すること自体は悪いことではないが、日本人はしばしば情緒不安定かと思うほど、常軌を逸した神格化に走ることが多い。

歯の浮くような賛辞の一方、ゴーン氏に対する激しい批判も一部には存在していたが、感情的なものがほとんどであり、的を射ていたとは言い難かった。ゴーン氏がなぜV字回復を実現できたのかという現実を考えた場合、ゴーン氏を神聖視することも、手のひら返しで批判することも合理的ではない。

日産は1999年に経営危機に陥り、仏ルノーに救済された。経営を立て直すためルノーから派遣されたのが、当時ルノー副社長だったカルロス・ゴーン氏である。

〔PHOTO〕Gettyimages
ゴーン氏の経営手法は極めて教科書的なものであった。トップダウンで徹底的なコストカットを行い、経営方針に反対する幹部は次々に更迭した。ゴーン氏への批判はたいていの場合、一連のコストカットやトップダウンのマネジメント手法に向けられることが多いのだが、考えなければならないのは、プロ経営者であるゴーン氏がなぜ、コストカットに邁進したのかという部分である。

高いブランド力を持つ著名企業が経営危機に陥るのは、たいていの場合、放漫経営が原因である。会社の経費を湯水のように使い、コスト感覚が麻痺し、最終的には巨額の損失を引き起こす。日産の経営危機はまさに放漫経営の典型であり、その意味では、経営陣も従業員も全員が共犯といってよい状況だった。

トヨタと日産の違い
トヨタと日産の違い
中高年の読者の方なら直感的に理解できると思うが、1990年代までトヨタと日産はライバルであると同時に対照的な企業カルチャーで知られており、当時のビジネスマンの間ではこんな冗談がよく交わされていた。

「トヨタと日産のどちらがスゴいかと聞くと、ほぼ100%の人がトヨタの方がスゴいと答える。だが自分の息子をどちらの会社に就職させたいかと聞くと、ほぼ100%の人が日産と答える」と。

トヨタは今でこそ社員に優しい企業というイメージだが、20年前まで同社の企業イメージというのは「苛烈」そのものであった。全社員が「カイゼン」を行うよう、日々、徹底的に追い詰められる。一方、日産にはゆとりがあり、社員は楽しく仕事をこなし、クルマ作りにも遊び心をふんだんに盛り込むことができた。

トヨタはかつて従業員に厳しいイメージを持たれていた〔PHOTO〕Gettyimages
こうした企業カルチャーの違いは、最終的には業績にあらわれてくる。日産が経営危機に陥った原因は、製造技術の低下でも、クルマ作りへの情熱の喪失でもなく、行き過ぎたゆとりがもたらした放漫経営そのものであった。そうであるならば、再建を託されてトップに就任したゴーン氏が選択する手法はコストカット以外にあり得ない。

その後、国内では日産がV字回復を果たしたといって、ゴーン氏に対する賞賛の嵐となったが、これは逆に考えれば、いかに日産のコスト感覚が甘かったかということの裏返しでしかない。ゴーン氏に対しては、カリスマなどといった情緒的な賛辞を贈るのではなく、コストカットを徹底的に進めた実行力こそ評価すべき点だったはずだ。

ゴーン氏はグローバル・スタンダードの人物ではない
今となっては批判の的となっている高額報酬についても奇妙な世論だった。日本では、ゴーン氏はいわゆるグローバル・スタンダードの象徴と見なされており、当時の日本の平均的な企業経営者とは比較にならない水準の高額報酬が許容されてきた。

「上場企業の経営者の報酬は高額で当たり前」という話の引き合いに出されるのは決まってゴーン氏だった。

ゴーン氏の影響なのかは不明だが、その後、日本の経営者の役員報酬はうなぎ登りに上昇し、お話にならないレベルの業績しか上げていない企業の役員までもが億単位の報酬をもらうようになった(今の日本では、業績は国内基準で、役員報酬だけがグローバル基準というご都合主義となっているところが少なくない)。

筆者は、国籍に関わらず有能な人物を高額で雇うことについて、基本的に賛成する立場だが、ゴーン氏が、高額報酬の妥当性の根拠となる、いわゆるグローバル・スタンダードな人物なのかという点については疑問がある。

本当のグローバル企業というのは、明確な国籍がなく、拠点も人材も多国籍になっているものだが、こうした体制の企業はそれほど多くない。米自動車大手のGM(ゼネラル・モーターズ)はまさに米国を象徴する企業だし、グーグルもアップルも国際的に事業は展開しているが、れっきとした米国企業である。

その論理で考えれば、フランス政府が筆頭株主となっているルノーは、グローバル企業ではなく、典型的なフランス企業ということになる。

日本ではフランスというと「自由の国」といった曖昧なイメージしか持っていない人が多いが、現実のフランスは異なる。同国はもともと革命国家であり(今の体制は第5共和制)、ミッテラン政権時代には企業の国有化を強力に進めるなど、社会主義的・官僚主義的な色彩が極めて濃い。ゴーン氏自身もレバノン系ではあるが、フランスの官吏養成機関であるグランゼコールを卒業した典型的なフランスのエリートである。

権力闘争も中国並みに激しく、かつて大統領候補になったこともある有力政治家ドミニク・ストロスカーン氏(当時IMF専務理事)はニューヨークのホテルに滞在中、性的暴行の疑いで突然逮捕され、そのまま政界から追放された(その後、同氏は不起訴になっている)。政治家が逮捕によって失脚するケースはかなり多い。

フランスでは、高額報酬は許容されていない
国営企業が中心のフランスでは、企業のトップにはグランゼコールの卒業生(つまり国家が養成したエリート)が就くケースが多く、強力な権限が付与される一方、米国企業やグローバル企業のような超高額報酬は許容されない。

ゴーン氏は、日産のトップに就任して以降、高額な報酬を受け取ってきたが、ゴーン氏は親会社であるルノーからは多額の報酬をもらっていない。最近でこそルノーからの報酬も引き上げたが、フランス政府はゴーン氏の報酬引き上げに反対してきたし、フランスの世論も高額報酬を許容していないのだ。

ゴーン氏自身はこうしたフランスの社会主義的な風潮について快く思っていなかった可能性が高いが、フランス政府が筆頭株主である以上、その意向を無視するわけにはいかない。

結果として、日産という地球の裏側にある現地子会社を使い、目立たないよう多額の報酬を得ていたというのが実態である。日本にあてはめれば、進出した東南アジアの現地法人で好き放題やった経営者をイメージすればよいだろう。こうした経営者は果たしてグローバル・スタンダードといってよいのだろうか。

ちなみにルノーと日産の統合を強く求めてきたフランス政府に対してゴーン氏は、日産の独立性維持を主張していたとされる。だが、それは日産が独立している方が、ゴーン氏自身にとってメリットが大きかったからである。日産が日本で独自に上場していれば、それを盾にフランス政府からの圧力をかわすことができる。

一連の出来事を総合的に考えると、もっとも甘いのは日本の株式市場や世論という結論にならざるを得ない。

ゴーン氏が仮に日産を食い物にしていたとしても、日本で上場している以上、それを是正することは可能であり、いつでもそのチャンスはあった。

だが企業経営者に甘い日本の株式市場や世論は、日産の穴だらけのガバナンス体制を放置し、結果としてゴーン氏のような経営者を長期にわたって続投させてきた。そもそも日産の危機的な状況に対して、日本の企業や投資ファンドがリスクを取って日産に資本参加していれば、外資の支援など仰ぐ必要はなかったという現実を忘れてはならないだろう。

日本国内では、ルノーと日産の今後について、両社が分離することを望む声が大きいように見える。だが市場が飽和しつつある自動車業界では、生き残りを賭けた激しいシェア争いが始まっており、規模のメリットが存続の命綱となっている。

現在、グローバル販売台数でトップに立っているのは独フォルクスワーゲンで、2017年の販売台数は1000万台を突破した。続いて、ルノー・日産連合、トヨタ、GM(ゼネラル・モーターズ)の順となるが、上位4社の販売台数にそれほど大きな違いはない。一方、5位の現代は730万台、6位のフォードは660万台と、上位4社とはかなりの開きがある。

業界では上位グループに入らない限り、総合自動車メーカーとしては生き残れないというのが常識となっている。

ここで、日産、ルノー、三菱自動車の3社が分離した場合、日産を含む各社は一気に下位グループに転落してしまう。日産もルノーも、もはや大手ではなくなり、スバルやマツダのようなニッチ戦略に転換せざるを得なくなる可能性もある。

本当にそれでよいのか、情緒ではなく論理で判断する必要があるはずだ(ルノー・日産の経営統合が実現したとしても、数多くの拠点を日本に構える企業であることに変わりはなく、工場や社員が丸ごとフランスに行ってしまうわけではない)。

今回のゴーン氏追放劇には、日産を独立させたいとの思惑が働いているとの報道もある。今後のグローバルな企業戦略まで考慮に入れた上でのクーデター劇ならまだマシだが、単にゴーン氏を追い出したいという情緒的な話だとすると、お粗末極まりない。場合によってはかつての日産に逆戻りという可能性すらあるだろう。
(記事引用)


日産の損失はゼロ、ゴーン氏は特別背任にあたらない
細野祐二氏が為替レートの変化からゴーン氏の運用実態を分析
2018.12.29(土)  細野 祐二jbpress.
「止む無く」特別背任で逮捕
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 12月21日、東京地検特捜部は、カルロス・ゴーン元日産自動車会長を会社法の特別背任罪容疑で再逮捕した。ゴーン元会長の逮捕は、11月19日の(2011年3月期から2015年3月期までの5事業年度の)役員報酬48億円の不記載に係る有価証券報告書虚偽記載罪容疑での1回目の逮捕、12月10日の(2016年3月期から2018年3月期までの3事業年度の)役員報酬42億円の不記載に係る有価証券報告書虚偽記載罪容疑での2回目の逮捕に続く3回目である。

 東京地検特捜部は、12月10日の2回目の逮捕にともなう10日間の勾留期間が12月20日に勾留満期となったため、慣例に従い、当然のことのようにさらに10日間の勾留延長を請求したところ、東京地方裁判所は「前の事件と争点及び証拠が重なる」として勾留延長を却下した。この日、ゴーン会長は保釈される可能性が高かったのである。止む無く、東京地検特捜部は、急遽ゴーン元会長の特別背任罪での逮捕に踏み切った。これを受けて、東京地裁は、12月23日、ゴーン会長の10日間の勾留を決定した。新たな勾留期限は2019年1月1日となり、ゴーン元会長は2019年の元旦を東京拘置所で迎えることが確定した。

SEC、新日本監査法人が事前に問題指摘
 現時点までに新聞報道等で明らかとなったゴーン元会長に対する特別背任容疑の概要は次の通りである。

 ゴーン元会長は、2006年以来、個人金融資産の管理運営を新生銀行に委託していたところ、2008年10月、リーマンショックに伴う急激な円高により、自身の資産管理会社が新生銀行と締結していた通貨スワップ契約に巨額の損失を抱えることになった。この含み損に対して、新生銀行が担保不足による追加担保の提供を要請したところ、ゴーン元会長はこれを拒否し、契約自体を日産に付け替えるよう指示した。

 新生銀行側は、日産への契約移転には取締役会の決議が必要と指摘し、これを受けて、ゴーン元会長の意を受けた当時の秘書室長は、損失付け替えの具体的な内容については明らかにせず、「外国人の役員報酬を外貨に換える投資」について秘書室長に権限を与えるという形をとって取締役会の承認決議を得た。この取締役会の決議を受けて、新生銀行は契約移転に応じることとし、2008年10月、約18億5000万円の評価損を含む通貨スワップ契約は日産自動車に移転された。これが特別背任における第一の逮捕容疑である。ちなみに、この時の秘書室長は、今回の日産カルロス・ゴーン事件の内部通報者で、東京地検特捜部と司法取引で合意することにより刑事処分の減免を受けている。
ところで、その後、証券取引等監視委員会は、新生銀行の関連会社に対する検査を通じてゴーン元会長の損失付け替えを把握し、「本件での日産自動車側取締役会決議にはコンプライアンス上の重大な問題がある」として是正を求めた。また、同じころ、日産の会計監査人である新日本監査法人も、会計監査の過程で本件損失付け替えを把握し、「会社が負担すべき損失ではなく、背任にあたる可能性もある」と日産側に指摘した。


「日産の損失はなく、背任には当たらない」
 外部からの相次ぐ指摘を受けて、ゴーン元会長は本件通貨スワップ契約を自身の資産管理会社に再移転することにした。この際、巨額の評価損に対応する追加担保が必要になったが、サウジアラビアの知人が外資系銀行発行の約30億円分の「信用状」を新生銀行に差し入れたため、ゴーン元会長は追加担保の提供を免れることができた。外資系銀行より信用状を発行してもらうためには、通常は保証額の数%の保証料を支払う必要があるが、本件では、知人がこの保証料を負担していたとみられる。

 その後、ゴーン元会長は、この知人が経営する会社の預金口座に、中東での販促などを担当しているアラブ首長国連邦の子会社「中東日産会社」の口座から、2009年6月から2012年3月にかけて、3~4億円ずつ全4回にわたり合計1470万ドル(約16億円)を販売促進費名目で振り込ませた。資金は、「CEO Reserve」と呼ばれる日産の最高経営責任者直轄の費用枠から捻出されている。これが特別背任における第二の逮捕容疑である。

 ゴーン元会長は、損失付け替えについては、結果的に契約を再移転していることなどから、「日産の損失はなく、背任には当たらない」と主張。また、知人への支払は、サウジアラビア政府や王族へのロビー活動あるいは現地販売店と日産との間で生じていた深刻なトラブルの解決の協力など「日産のための仕事をしてもらっていた」と説明し、正当な業務の対価だったと主張している。

ゴーン氏が結んだ通貨スワップ契約とは
 ゴーン元会長の特別背任容疑の原点は、個人資産管理会社が新生銀行と締結していた通貨スワップ契約にある。通貨スワップ契約とは、元来は、特定の外貨を直物で買う(売る)と同時に同額の外貨を先物で売る(買う)一対の外貨契約のことをいうが、現在では、将来の外貨でのキャッシュフローを交換する取引として広く定義されている。

通貨スワップ契約は直物外貨と先物外貨の交換取引なので、それ自体としては損益を生むことがないが、外国為替の直物レートと先物レートは同一とはならないので、直物で買った(売った)外貨がそれと同額の先物で売れる(買える)というわけではない。直物レートと先物レートに差が生じるのは、外国為替が、直物と先物のスプレッドにより、それぞれの通貨の金利差を調整しているためである。直物と先物の外貨交換差額を狙った金融取引が通貨スワップ契約となる。


 さて、リーマンショックの起きた2008年9月以前の外国為替市場において、米ドルの為替レートは1ドル=108円程度で、米ドルの1年物金利は3%程度、日本円の1年金利はほぼ0%で均衡していた。この均衡条件で1年先物の理論レートを計算すると、米ドルの1年先物レートは次の通り1ドルが104円85銭となる。

直物レート108円÷{1米ドル×(1+金利3%)}=先物レート104円85銭

 2005年から2007年にかけての米ドルの先物外国為替レートは、日米の金利差を反映して、米ドルの先物が大幅なディスカウントとなっていた。このような市場環境の下で、米ドルの先物買いとなる通貨スワップ契約を締結すれば、契約者は、外国為替レートが円高にならない限り、日米金利差3%の運用利益を得ることができる。ここで標準的な通貨スワップとして100万ドルの運用事例を例示すると次の通りとなる。

①契約締結時(先物レート1ドル=104円85銭)

(借方)デリバティブ債権 $1,030,000

(貸方)デリバティブ債務 ¥108,000,000

②決済時(直物レート1ドル=108円)

(借方)デリバティブ債権 ¥111,240,000

(貸方)デリバティブ債務 $1,030,000

③運用益

 円建てデリバティブ債権¥111,240,000
  -円建てデリバティブ債務¥108,000,000
   =運用益¥3,240,000

 運用利回り3%=運用益¥3,240,000÷想定元本¥108,000,000

 この時代、外資系金融機関を中心に通貨スワップ契約を組み込んだ金融商品が数多く開発され、高額所得・資産の富裕層に対して積極的に販売されていった。この手の通貨スワップ内蔵型金融商品は、顧客から預かる一定の証拠金にレバレッジを効かして、その数倍の通貨スワップ契約を締結する形態となっている。もとより、通貨スワップ契約は、外国為替における直先スプレッドを運用益として固定する代わりに、為替レートの変動リスクを取る金融取引なので、それにレバレッジがかかれば、為替変動リスクは通常の為替変動リスクの数倍に膨れ上がる。ゴーン元会長が嵌った通貨スワップ契約は、この手の為替リスクの高い金融商品だったに違いない。

為替レートの変化から運用実態を分析すると・・・
 2008年9月のリーマンショックにより、安全通貨とされる日本円への資金逃避が起き、ドル円レートは2008年9月の108円から2009年2月の89円まで一気に19円幅(17.6%)の円高となった。ゴーン元会長の通貨スワップ契約は約18億5000万円もの評価損を抱えることになったというのであるから、その想定元本は少なくとも105億円(=18億5000万円÷17.6%)以上でなければならない。

 この通貨スワップ契約に対してゴーン元会長が差し入れていた証拠金の額は不明ではあるが、ここで一般的な適正レバレッジを3倍と考えると、ゴーン会長に求められる必要証拠金は35億円(=105億円÷3倍)ということになる。おそらくゴーン会長はこの通貨スワップ契約に対していくばくかの証拠金を差し入れていたのであろうが、これがリーマンショックにより18憶5000万円の評価損となったので、追証が発生したのである。

新生銀行はゴーン会長に追加証拠金の拠出を求めたものの、ゴーン会長はそれを拒否し、契約自体を日産に付け替えることにした。契約当事者が日産自動車ということであれば、証拠金の不足があろうが決済不能などあり得ないので、新生銀行に否やはない。こうして、本件通貨スワップ契約は18億5000万円の評価損のまま日産に付け替えられたが、その時の会計仕訳は次のようなものとなる。


(借方)デリバティブ債権 $97,222,222

 (貸方)デリバティブ債務 ¥10,500,000,000

 想定元本105億円÷契約時レート108円=97,222,222米ドル

 本件通貨スワップ契約の日産への付替えは2008年10月のこととされているが、その時の会計処理では、ここで発生していたとされる18億5000万円の評価損は認識されることはない。通貨スワップ契約の含み損が認識されるためには、日産自動車の決算期における会計処理を待たなくてはならない。日産自動車の2009年3月期末において本件通貨スワップが未決済となっていた場合、次の決算整理仕訳が必要とされる。

(借方)デリバティブ債権  ¥8,652,777,758
    デリバティブ評価損 ¥1,847,222,242

(貸方)デリバティブ債権 $97,222,222

 ドル債権$97,222,222×直物レート89円=円債権¥8,652,777,758

日産は形式上も実質上も損失を認識できなかった
 本件通貨スワップ契約は2009年1月にはゴーン元会長の資産管理会社に再移転されたという。ならば、日産自動車は、評価損を認識すべき2009年3月期末を迎えることなく通貨スワップ契約を再移転したのであるから、その受入から再移転までの全ての期間において、18億5000万円の評価損を一切認識しておらず、認識するすべもなかったのである。ゴーン会長は、本件スワップ契約の付け替えにつき、「日産に実損はない」と抗弁しているとのことであるが、事実は、実損がなかったどころか、形式上も実質上も日産には一切の損失が認識できなかったのである。

会社法は、第960条により、会社の取締役が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると規定している。ゴーン元会長に特別背任罪が成立するためには、日産に財産上の損害が認定できなくてはならず、要するに、ゴーン元会長の特別背任容疑における第一の犯罪事実は存在しない。


「サウジの知人」ハリド・ジュファリ氏
 さらにここに登場するのが、サウジアラビアの知人ハリド・ジュファリ氏である。ハリド・ジュファリ氏は、サウジアラビアの財閥「ジュファリ・グループ」の創業家出身で、サウジアラビア有数の複合企業「E・Aジュファリ・アンド・ブラザーズ」の副会長のほか、同国の中央銀行理事も務めている。ジュファリ氏が経営する会社は、2008年10月、アラブ首長国連邦に日産との合弁企業「日産ガルフ」を設立し、ジュファリ氏はその会長に就任している。「日産ガルフ」は、日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートする目的で設立されている。

 ジュファリ氏は、新生銀行から追証を求められ苦境にあるゴーン元会長を救済するため、自らの資金約30億円分を外資系銀行に預け入れ、その預金を裏付けとして約30億円分の銀行信用状を発行させた。この信用状はゴーン元会長を経由して新生銀行に差し入れられ、通貨スワップ契約は無事に日産からゴーン元会長の資産管理会社に再移転された。これが2009年1月のことである。

 その後、ジュファリ氏の個人口座には、2009年6月から2012年3月にかけて、「中東日産会社」の口座から、3~4億円ずつ全4回にわたり合計1470万ドル(約16億円)の金が販売促進費名目で振り込まれている。東京地検特捜部は、この金を、ジュファリ氏が行った信用保証の謝礼金だと言うのである。

 一般に、銀行が信用保証状を発行するには、保証額の数%の保証料を徴収する。本件の場合、この保証料はジュファリ氏が負担していたとされているが、その保証料なるものは、仮に保証料率を3%と想定しても、年額9000万円程度のものに過ぎない。しかも、結果的に、ジュファリ氏が外資系銀行に供託した30億円は手付かずで保全されている。ゴーン氏がジュファリ氏の負担した数千万円のために約16億円もの謝礼金を払うというのは、およそ経済合理性に反する。しかも、ジュファリ氏は、事実として、日産の中東市場の販売・マーケティング業務をサポートする目的で設立された「日産ガルフ」の会長であった。ゴーン元会長は、「知人への支払は、サウジアラビア政府や王族へのロビー活動あるいは現地販売店と日産との間で生じていた深刻なトラブルの解決の協力など日産のための仕事をしてもらっていた」と抗弁するが、その抗弁は客観的事実に裏付けられている。これをもって特別背任などと主張するのはおよそ馬鹿げており、ゴーン元会長の特別背任容疑における第二の犯罪事実は成立しない。

 東京地検特捜部もよくこんなもので逮捕請求ができたものだと感心するが、ここで第一の犯罪事実及び第二の犯罪事実の証拠構造を冷静に分析すると、ゴーン元会長の特別背任容疑には、元秘書室長の提供する内部情報とその証言以外にろくな証拠などないことが分かる。この人は、司法取引に応じることにより刑事処分を免れているので、東京地検特捜部の求めるどのような供述調書にも喜んで署名する。元秘書室長は東京地検特捜部の唯一の頼みの綱ということになるが、この人の証言の証拠価値は低い。元秘書室長の証言など、ハリド・ジュファリ氏の証言が出れば、一発で撃沈するからである。

 元秘書室長との司法取引は、日産ゴーン事件における東京地検特捜部の失敗の本質でもある。なぜなら、ゴーン元会長がジュファリ氏に対する販売促進費の支払をもって特別背任とされる以上、ジュファリ氏はゴーン元会長の特別背任事件における共同正犯になってしまうからである。

 東京地検特捜部は、ゴーン元会長の有価証券報告書虚偽記載罪での逮捕長期勾留により、フランス政府、ブラジル政府、ヨルダン政府を敵に回したが、今回の特別背任罪での逮捕によりサウジアラビア政府さえも敵に回すことになった。

 この人たちのやっていることは、自らの組織の保身のために、我が国の国益に反する外交問題を引き起こしているのである。事件は、全3回に及ぶ長期勾留によりゴーン元会長が追い詰められているように見えるかも知れないが、事実は全く逆で、瀬戸際まで追い詰められているのはむしろ東京地検特捜部なのである。東京地検特捜部並びに東京地裁は、本件が世界のジャーナリズムの監視の下、グロ―バル世論の下で進行していることを忘れてはならない。

細野 祐二
1953年生まれ、早稲田大学政経学部卒業。4大監査法人の1つKPMGで、会計監査とコンサルタント業務に従事。2004年3月、キャッツ株価操縦事件に絡み、有価証券虚偽記載罪で逮捕・起訴。一貫して容疑を否認し、無罪を主張するが、2010年、最高裁で上告棄却、懲役2年、執行猶予4年の刑が確定。公認会計士登録抹消。著書に『公認会計士vs特捜検察』、『法廷会計学vs粉飾決算』、『粉飾決算vs会計基準』(以上、日経BP社)、『司法に経済犯罪は裁けるか』(講談社)など。
(記事引用)





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