脳と光の不思議を科学する 情報理工学部情報科学科
高雄元晴教授 毎日新聞 東海大学   
人間を包み、照らす光。情報理工学部情報科学科の高雄元晴教授は光と脳との関係に焦点を当て、光が人間の体に与えるさまざまな影響について研究を進めている。そして、「脳にいいプラモデル」「携帯電話依存症」「バーチャルリアリティー」へと、探求の対象は広がり続ける。【毎日新聞社デジタルメディア局 浜名晋一】
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 ――「非イメージ形成視覚の光の受容」が研究テーマですが、具体的な内容を教えてください。

 目から入ってきた情報を脳で情報処理するに当たって、二つの経路があることが分かっています。一つが「写真に友人が写っている」「赤い夕焼け空だ」という感じで、意識される視覚。最近ではイメージ形成視覚と呼ばれています。もう一つは、目から情報が入ってきて、脳に伝わるが認識されない無意識の視覚です。こちらは非イメージ形成視覚と呼ばれています。私は、主に後者の光受容の仕組みを調べています。

 非イメージ形成視覚の代表例として、概日リズムの光同調が挙げられます。概日リズムとは、約1日のリズムを刻む体や心のリズムを指します。このリズムは主として脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)で刻まれます。人間は朝起きて夜寝る生活をしていますが、脳で刻まれている時計というのは、多くの人の場合、24.5時間とか、24.1時間という感じで24時間より少し長くなります。例えば、昼も夜も分からないような暗い部屋にずっといて、そこで暮らすとします。朝7時に起きて、夜12時に寝るなら、本人はいつも通りに生活しているつもりでも、体のリズムを調べると、だんだんと後ろにずれてきます。1日に30分ずれている人は、24日たったら12時間ずれてしまう。このずれてしまった時間の感覚を、人間はどのようにして毎日巻き戻しているのかというと、光が大きな役割を果たしています。これを光同調と呼びます。

 人間は朝浴びる光が視交叉上核に情報を伝えるおかげで、毎朝7時なら7時にきっちり起きられます。頭の中で「朝の光が入ってきた。目を覚まさなくちゃ」と意識しなくても、自動的に無意識のうちに処理されます。

 ――光を浴びることで、ずれた脳内の時計をリセットするということですね。非イメージ形成視覚の産業への応用も考えているとか。


 米国の大学に留学していた時に、この視覚系に関わる特別な細胞が網膜にあるということを発見しました。内因性光感受性網膜神経節細胞と私たちが名付けた細胞ですが、この性質を調べることで、非イメージ形成視覚の特徴を明らかにできるということが分かり、東海大に赴任してからも、この研究を続けています。この細胞は、波長がだいたい480ナノメートルくらいの光に最も感度が高いことが研究で分かりました。この波長の色はやや薄い青色ですね。

 また、この青色1色よりも、他の色を混ぜた方が明らかに概日リズムの光同調の効果が高いということも分かってきました。光の色をブレンドすることによって、気持ちよく目覚めて、夜はしっかり寝られるような照明器具ができないかと応用研究を進めています。

 ――光と睡眠との関係で言えば、スマートフォンと不眠との関連を指摘する研究があります。先生も携帯電話依存に関する研究をされていますね。

 スマホは液晶画面のバックライトを青のLED(発光ダイオード)も用いて発光させています。この青の光が概日リズムのリセットに関係する光ということで注目されています。寝る前に強い光を浴びると、概日リズムは遅い時間にずれてリセットされることから、スマホを寝る前に操作すると、画面の強い青い光で不眠になってしまうかもしれないということが盛んに言われています。

 私が学生たちと行ったのは「携帯電話依存の心理学的研究」です。この研究は2006年に行いました。当時、スマホはあまり出回っていませんでしたが、携帯電話を手放せない学生はいました。そのような学生はみな性格に同じような特徴があるということで、研究をしたところ、面白い結果が出ました。

 携帯を手放せないのは、「孤独な性格」のためと思われがちですが、実際手放せない学生は、非常に外向的な性格の学生が多く、承認欲求が強い傾向にありました。承認欲求とは「自分を認めてほしい」という欲求のことです。そしてセルフモニタリングという特性も高いことがわかりました。セルフモニタリングはカメレオニズムともいいますが、自分がなく、周りに同調してその場その場で自分を変えてしまう性格・行動特性のことです。いわば、お調子者で空気が読めて、集団の中で自分を演じられる学生です。まとめていうと、外向的で自分のことをも認めてほしい気持ちが強く、しかも空気の読める学生ほど、携帯依存になりやすいことが分かりました。
(記事部分引用)