神社は「コンビニより多い」、という歴史無知を露呈
常識的に神社の歴史の古いことは日本人なら理解しているはずだが、コンビ二とそれを比較して多い少ないという比較論はまったく当たらない。

今回の殺人事件で、その閉じられた世界が洗いざらし世間に晒されたということは功罪というべきか。神社といえども「かすみ」を食って営業しているわけではないので、基本的に株式会社と同じで「上がり」、その利益配分で職員の給与を払っている。
宗教組織であるから、その項目部分に該当するものは無税だが、「札」など多く売れば利益も比例して増えて、所得税を納める。だから有名古刹や大規模神社の貸借対照表の桁が違う。そうした台所事情を一般人はほとんど知らない。隠しているわけではないが、世間話の話題にあがらない、また詳しく知らないというのが実体だ。

いずれにしても「血なまぐさい欲得殺人事件」を引き起こした醜態は、神社界にとっても恥であり、その汚点は歴史上に残ってしまう。
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富岡八幡宮死傷:超格差社会? 神社を巡る意外な事情
毎日新聞 2017年12月15日 19時51分
 7日夜、東京都江東区の神社「富岡八幡宮」を舞台に起きた殺傷事件は、宮司職を巡るトラブルが背景にあったとされる。神社は初詣などで身近な存在だが、宮司はどう決まり、運営の実態はどうなっているのか。事件をきっかけに調べてみると、意外な神社事情が浮かんだ。【福永方人、岸達也/統合デジタル取材センター】

神社はコンビニより多い

 神社は、全国にいくつあるのか。誰もが抱く素朴な疑問だが、驚いたことに正確な数は不明だ。全国の神社の多くを傘下に収める宗教法人「神社本庁」(東京・代々木)は、神職の常駐していない小さなお宮まで含め10万社程度と推計する。15万社を超えるとの説もある。全国に約5万5000軒あるとされるコンビニエンスストアの倍以上あるかもしれない。

 その神社本庁は、皇室の祖神とされる「天照大神」(あまてらすおおみかみ)を祭る三重県の伊勢神宮を「本宗(ほんそう=最も尊い神社)」と仰ぐ神社界の最大勢力で、全国約7万9000社を傘下に入れている。

 傘下の神社は伊勢神宮のお札(正式名称「神宮大麻<じんぐうたいま>」)を売り、その売り上げは伊勢神宮に納めている。神社と本庁の関係は、店舗がブランド商品の提供を受けて本部にロイヤルティーを払うコンビニエンスストアのチェーンに似ている。だが、コンビニと違って神社本庁は傘下の神社の宮司を任命する権限を持っている。宮司は神社側の推薦をもとに、同庁の人事委員会で任命するかを協議する。

 神社のうち由緒や規模などから有力とされる約350社を、同庁は特別の神社(正式名称「別表<べっぴょう>神社」)に指定している。今回の事件が起きた富岡八幡宮は、今の大相撲のルーツである「江戸勧進相撲」の発祥地として知られる別表神社だったが、事件で殺害された宮司の富岡長子さん(58)の就任を本庁が認めなかったため、今年9月に本庁から離脱していた。この他、宇佐神宮(大分県)や気多大社(石川県)は宮司人事などで同庁側と対立し、訴訟に発展した。

 伊勢神宮を頂点とする神社本庁に対し、靖国神社(東京都)や日光東照宮(栃木県日光市)、伏見稲荷大社(京都市)など、同庁の傘下にない有名神社もある。明治神宮(東京都)は参拝式の案内状で天皇、皇后両陛下を「両殿下」と誤記したことがきっかけで同庁とトラブルになり、2004年に離脱したが、10年に復帰した。

 宗教学者で作家の島田裕巳さんは「神社本庁に人事権を握られるなど傘下の神社はしがらみが多い」と指摘。「独力で運営できる有力神社は離脱しても問題ないが、過疎地の小さな神社は神職の確保などで神社本庁に頼らざるを得ない」と話す。

年収300万円未満が6割超

 神社の収入源は、主にさい銭、神事の祈とう料や駐車場経営だ。人口減少に伴い、初詣や合格祈願などで有名な神社や参拝客を見込める都市圏の神社を除き、担い手不足や資金難にあえぐ神社が増えている。

 神社本庁が全国の傘下の神社を対象に昨年実施したアンケートによると、年間収入が1億円以上の神社は2%前後にとどまる一方、300万円未満は6割強に上る。また、宮司の後継者がいない神社は4割近くある。文化庁の統計では、神社本庁傘下の神社にいる神職(宮司や権宮司、祢宜<ねぎ>など)は全国に約2万2000人と神社数の3割弱しかいない。

 過疎地では兼業の宮司だったり、複数の神社の宮司を兼務したりするケースが少なくない。宮司が確保できず、本庁側から派遣してもらう神社も。ある試算では、40年までに神社の約4割が消滅する可能性があるという。

 雑誌「宗教問題」編集長の小川寛大(かんだい)さんは「神社界は超格差社会」と指摘する。「神社を支える氏子組織が地域の過疎化や少子高齢化で崩れつつある。宮司は一部を除き、決してもうかる仕事ではない。兼職や兼務で祭りや氏子のコミュニティーを何とか維持している状況だ」と強調する。神社本庁も来年から過疎地の神社の活性化策を本格実施するというが、効果は不透明だ。

 近年はツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で行事などの情報を発信する神社も増えている。広島県内の神社の宮司で、神職養成講座などを手がけるNPO法人「にっぽん文明研究所」代表の奈良泰秀(たいしゅう)さんは「中小規模の神社が生き残るには神社本庁任せではなく、人が集まる祭りをつくるなど、各神社が自ら工夫していく必要がある」と話している。
(記事引用)