スペインTVE フランスF2 台頭する「ポデモス」イグレシアス党首
2015年3月9日(月)NHKオンライン
「スペインのポデモス党は、去年(2014年)1月に結成されたばかりで、反緊縮策を掲げる急進的な左派政党として知られています。
党の名前であるこの『ポデモス』とは、『私たちはできる』という意味です。財政緊縮策に真っ向から反対して、インターネットを駆使した選挙運動で知名度を一気に上げました。
結党からわずか4か月後の去年5月には、ヨーロッパ議会の選挙で初めて5議席を獲得し、脚光を浴びました。

また、各種世論調査の平均値では、去年11月にトップの与党・国民党の支持率に追いつき、その後も二大政党に割り込む形で激しく争っています。
党員の数もみるみるうちに増えて、今では35万人を超える規模になっています。
反緊縮策を掲げて今年(2015年)1月にギリシャで誕生したチプラス政権への支持を表明していまして、スペインでも年内に実施される予定の総選挙で、同じく反緊縮派のポデモス党がどれだけ得票を伸ばすのか、注目されています。」

高野
「スペインで今、勢力を増している急進左派の『ポデモス党』。フランスF2やスペインTVEは次のように伝えています。」
 
マドリードの広場で「ポデモス」支持者集会

広場が大勢の人々で埋まっています。連帯を呼び掛ける声が響いています。ヨーロッパの緊縮政策に反対する、急進左派「ポデモス」の呼びかけに集まった人々です。

男性
「今日は大勢集まっています。
変化を求めているのです。」

男性
「ギリシャに歩調を合わせて、ドイツのメルケル首相に対立する側につくべきです。」

ちらほらとギリシャの国旗もはためきます。ギリシャでの急進左派の勝利が、ヨーロッパの政策を変えたい人々を鼓舞します。そしてスペインの希望を象徴するのがこの人、イグ

レシアス党首、36歳です。
若々しいルックスに、ラフないでたち。
しかし演説は攻撃的です。

ポデモス党 イグレシアス党首

「アテネからヨーロッパ大陸へ。

2015年は、民主的な変化の風が吹いています。
ヨーロッパの急進左派全体が、活気を取りもどすような勢いです。社会学研究所の世論調査では、今、選挙をしたとすれば、国民党が27.3%の得票率で再び勝利するという予想になりましたが、ポデモスは23.9%で、1.7ポイントの差をつけて社会労働党の座を奪いました。
統一左翼と進歩民主連盟は4位と5位を維持。
カタルーニャ市民党は、カタルーニャ同盟とカタルーニャ左翼共和党などに勝ち、6位です。

世論調査ではポデモスが2度目の一番人気で、19.3%を獲得しています。

国民の関心事には変化はありません。
失業が最大の懸念事項で、このひと月で4ポイント増えました。
汚職と経済への見方は少し改善しています。

新党「ポデモス」 躍進の背景
高野
「スペインでは4人に1人がいまだに失業している状態で、25歳以下の若者層については50%以上の失業率が続いています。

ポデモス党の党首、パブロ・イグレシアス氏は、36歳という若さでスペインの名門、マドリード・コンプルテンセ大学で政治学の教授を務めていた知識人です。
また、テレビの討論番組の司会者としても知られており、その知的なキャラクターが特に若者の間で人気を集めているようです。

今月(3月)後半には、全国で州議会選挙が実施されるスペイン。
選挙戦が本格化する中で、党の創設者の1人が不正資金を受け取っていたのではないかという問題が浮上し、ポデモス党は連日、各党から厳しい突き上げを受けています。
結成からわずか1年というポデモス党が、なぜここまで注目を集める存在になったのか。
その背景について、静岡県立大学准教授の松森奈津子(まつもり・なつこ)さんにうかがいました。」
abit1212
話:静岡県立大学 松森奈津子准教授
「EUに対してもっと自立した政策を取り、市民の声が反映される『本当の民主主義』を作ろう、われわれにはできると、力強く訴える若々しい新鮮な政党が現れました。
外見こそラフだけれども、礼儀正しく理路整然と討論し、クリーンなイメージ。
2011年5月にマドリードで起きた大規模な抗議運動に端を発しています。

この市民運動は、主要なポストを独占してきた二大政党制や、癒着してきた銀行などと決別し、市民の手に政治を戻そうという主張に基づくもの。
その後、スペイン各地で何度も起こる抗議運動の基になりました。
ポデモス党はこの流れの中、2014年1月に30人の知識人による署名で結成されました。
選挙を控えたこの時期に不正疑惑を攻撃されるのは、ポデモス党だけでなく、与党国民党も裏帳簿問題などで追及されています。
通常この時期であれば、二大政党間でお互いに汚職問題などをたたきあい、その他の政党が口を挟むといった状況ですが、今回は二大政党やその他の諸政党が一致してポデモス党を攻撃しています。
政権与党だけでなく、諸政党にとって脅威になっているということだと思います。
もしポデモス党が絶対多数の単独政権に就くことになれば、民主化後のスペイン政治を大きく転換する政策を打ち出し、国内の社会構造とEUをはじめとする外交関係において、大きな変化が生じる可能性があります。
なれ合いになってしまっている既存の政治文化を打ち破ろうとする点で、ポデモス党に潜在的な意義を認めることができるかもしれません。
実際の政権運用という点では、政治家として経験の浅い党員たちが自分たちの理想を現実にうまくすり合わせていけるのか、疑問が残ります。」

高野
「反緊縮派が力をつければ、財政再建への道に暗雲がたちこめることにもなりかねません。
スペインでその存在感を増しているポデモス党の動向は、今後のヨーロッパ経済の行方を占う上でも重要なカギとなりそうです。」
(記事引用)