M資金 (2013年10月24日 18:15改訂版
M資金(エムしきん)とは、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した財産などを基に、現在も極秘に運用されていると噂される秘密資金である。
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M資金の存在が公的に確認された事は一度もないが、その話を用いた詐欺の手口(M資金詐欺)が存在し、著名な企業や実業家がこの詐欺に遭い、自殺者まで出したことで一般人の間でも有名になった。Mは、GHQ経済科学局 (Economic and Scientific Section、略称 ESS)[1]の第2代局長であったウィリアム・フレデリック・マーカット(William Frederick Murcutt)少佐(後に少将)の頭文字とするのが定説となっている。
その他にマッカーサー、MSA協定、フリーメーソン (Freemason) などの頭文字とする説などがある。

M資金詐欺の代表的な手口
M資金詐欺は、詐欺の存在がある程度社会的に認知されてしまうと、成功する可能性が低くなってしまうため、その流行には認知度が低下する頃に復活するという傾向があり、昭和30年代から現代に至るまで、ほぼ同じ手口・内容のM資金詐欺が繰り返されている[3][4]。M資金詐欺師が目を付けるのは、企業の経営者や実業家といった、それなりに社会的地位のある人々であり、彼らが詐欺に遭ったきっかけは、ビジネス上の新規展開や業績不振の打開のために、大きな投資を必要としているが、金融機関からの借り入れが難しい状況にあった、という人々が多い。

こうした情報は金融機関の与信担当者や、単件・大口ベースの金融業者から漏れた情報を、M資金詐欺師がキャッチしている場合がほとんどである。M資金詐欺師は、被害者を信用させるためのもっともらしい小道具を作るために、財務省(旧大蔵省)内部で使用される封筒や便箋などを様々な伝を使って入手し、時には財務省の庁舎内で被害者と会うなどして、当局との関係を強く類推させることで被害者を信用させていく。また元代議士や皇族、大企業の役員等が本人が気がつかない形で(パンフレット等に)利用されることもある。


やがて、おもむろに巨額の金額が記された、偽造の“国債還付金残高確認証”などを見せる。そして多くの被害者にとって未知の書類・用語を用い、「元代議士」や「皇族」、「大企業の役員」と称する人物が実際に有資格者の前に現れるなど、多種多様な詐術を駆使して思考を麻痺させ、下記のような虚実織り交ぜた話で、被害者の欲求につけ入り、からめ取って行く。


M資金は、ごく限られた日本政府の高官やアメリカ政府の関係者によって運営される秘密組織によって、その一部が管理されてきた。
その巨額の資金(1950年代で800億円、現在では数十兆円ともされる)は、1951年の講和成立(サンフランシスコ条約の締結)により、その一部が日本側に返還され、一定の条件の下に秘密組織により適切と判断した個人とその団体に委譲され、保有資金が最大限有効に活用され今日に至っている。
 この資金を一定の制約の下に、非常に有利な条件(利息、返済、課税)で資金委譲を受ける資格を得た者がその恩恵に与る。
 この資金の恩恵に与る有資格者には、一定の条件を満たす人格者(社会的信用、資金管理及び経営能力、地域社会における指導力、人心掌握力などに優れる者)であることが求められる。
 さらに、この資金の有効活用に鑑み、十分なる理解力、発想力、想像力、継続力を具えることが必須となる。
 交付を受けた資金の一部は有資格者が自由に利用してもよい。
そして、これらの資格を証明するものとして、提供資金に見合った申込金、手数料などの支払いが事前に必要となる(多くの場合、それらの申込金、手数料は提供資金よりはるかに低額に設定され、数千万円から数億円の金額である)。

これにプラスして、「M資金の移動には金融庁などの承諾」が必要で「給付対象者の銀行口座に入金された後、一部を残して某都市銀行の特殊資金口座に移され、対象者が必要とするときに現金口座に移される仕組み」などと説明し、被害者の口座にいつまで経っても巨額の資金の入金がなされない点に不審を抱かせないよう、事前に言い含めておくパターンもある。上記の話を信じ、M資金の恩恵に与ろうとした被害者が金を用意して仲介者(詐欺師)に渡した後、その人物はそのまま行方不明になる、というケースが典型的である。
時には契約の際に書かされた書類等をネタに、企業から金銭を脅し取る手口も存在する。なかには、すぐに姿を消さずに“通常では申込金の受付から審査まで数カ月かかるが、これを加速するための運動費を政治家に提供する”といった口実で、さらに金を引き出すM資金詐欺師もいる。多くの場合、被害者はビジネスの延長として詐欺に遭うため、事前に警察に相談しているケースは皆無であり、詐欺と気付いてからもビジネスへの影響を最低限に止めようと隠蔽に必死になるため、発覚が遅れる場合が多い。
また、起死回生を巨額融資に賭けていた実業家の場合などは、そのまま致命傷となることも多い。

M資金の由来第二次世界大戦終戦時の混乱期に、大量の貴金属やダイヤモンドなどの宝石類を含む軍需物資が、保管されていた日銀地下金庫から勝手に流用されていた隠退蔵物資事件や、件の日銀地下金庫にGHQのマーカット少佐指揮の部隊が調査・押収に訪れた際に、彼らによる隠匿があったとされた事件などが発生した。
GHQの管理下に置かれた押収資産は、戦後復興・賠償にほぼ費やされたとされるが、資金の流れには不透明な部分があり、これが“M資金”に関する噂の出典となった。
こうした噂が真実味を持って信じられた背景には、降伏直前に旧軍が東京湾の越中島海底に隠匿していた、大量の貴金属地金(内訳は金1,200本・プラチナ300本・銀5000トン)が1946年4月6日に米軍によって発見された事件や、終戦直後に各種の軍需物資が隠匿され、闇市を通じて流出していた時期の記憶が、多くの日本人の間で鮮明であったことが挙げられる。


また、戦後のGHQ統治下で構築された、いくつかの秘密資金が組み合わされたものが現在の“M資金”の実態であると主張する意見もあり、
それによれば、M資金: マーカット少佐に管理され、旧軍が占領地から奪った工業用ダイヤモンド、プラチナ、金、銀などの物資をGHQが接収して売却した資金など。

四谷資金: チャールズ・ウィロビーによって闇市の活動から集められ、反共計画に使われた資金。
  1. キーナン資金: ジョセフ・キーナンの名にちなんだ没収財産を元にした資金。
  2. 財閥解体後の株式売却益、米国からの援助物資および石油などの認可輸入品の売却益といった資金。

といった、GHQの活動を通じて形成された資金を統合したものが“M資金”であり、その運用は日本政府の一部の人々によって行われており、実際に幾多の国家的転機に際して利用されて来た歴史を持つ、としている。

(資料ウィキペディア)

 
「人類資金」
インゴット金1200本、プラチナ300本、銀5000トンの原資がM資金?

2013年10月19日(土)全国より公開された「人類資金」、是非見たいと思った映画の一つだ。
インゴット化された金1200本、プラチナ300本、銀5000トンの現物が本当に存在するのか、またあったのか、という疑心暗鬼は拭えない。だから戦後60年経過した現在でも「M資金」として、まことしやかに語られるのだろう。

このはなし、どうかするとカミの存在とよく似る。まったく観たことも訊いたこともない物理存在のカミは、再現不能という近代科学の定石からして全否定されてもおかしくない。ところが、この莫大な資金があたかも存在するかのように、そこに群がる人間の欲望が露骨に表出するというから興味津々だ。

このサイトの前の記事で、3Dバーチャルの「MJ presents Perfume × Technology」を紹介したが、バーチャルとリアルが混交した超異次元空間に息を呑んだ、という意見を書いた。
実際は3人のパフォーマンスによって繰り出される音楽とダンスだが、そこにハイテクを駆使して、そのキャラクターが無限に再現可能というから驚いてしまう。
もしかすると、この再現は、ひよっとすると莫大な貴金属やダイヤモンド、それにインゴット化された金1200本、プラチナ300本、銀5000トンなど、この世の人間欲の濃縮エキスの再現と近似して、永遠の憧憬でありながら、もしかすると金1グラムでも拝みたい、というカミ頼みの心境と、脳裏をかすめる。

アマゾン映画「人類資金」特集より
戦後最大のタブー 人類資金
「M資金」とは?

第二次世界大戦終戦時の混乱期に、大量の貴金属やダイヤモンドなどの宝石類を含む軍需物資が、保管されていた日本銀行の地下から、勝手に流用されていた「隠退蔵物資事件」やGHQのマーカット少将指揮の部隊が調査・押収に訪れた際に、「彼らが隠匿したとされる事件」などが発生した。GHQの管理下に置かれた押収資産は、戦後復興・賠償にほぼ費やされたとされるが、資金の流れには不透明な部分があり、「M資金」の存在が噂されるようになった。
こうした噂が真実味を持って信じられた背景には、降伏直前に日本軍が東京湾の越中島海底に隠匿していた、インゴット化された金1200本、プラチナ300本、銀5000トンという大量の貴金属が、米軍によって発見されるという事件が起きたり、終戦直後に各種の軍需物資が隠匿され、闇市を通じて流出していた時期の記憶が、多くの日本人の間で鮮明であったことが挙げられる。そしてこれらの運用は、日本政府の一部の人々によって行われており、実際に幾多の国家的転機に際して利用されてきた歴史をもつとされている。 

人類資金 ヨミウリオンライン
「小説が読まれていないという危機意識があるから、こんな仕事のやり方になっている。
何かの仕掛けをしないと、世に出て行かない」
骨太のエンターテインメントを描いてきた作家、福井晴敏さん(44)の新作『人類資金』(講談社文庫)は、自身が脚本などに関わった10月公開予定の同名映画と連動した大型企画だ。


今月9日発売の1、2巻を手始めに、全7巻の予定で書き下ろしの文庫を月刊ペースで出していく。社会の既成のルールと戦う意欲作を世に問う作家は、出版界の常識を覆す型破りの刊行にも挑む。多額の秘密資金を低金利で融資する話を持ちかけ、手数料などをだまし取る―。


物語の題材である「M資金」は、戦後何度も繰り返されてきた詐欺の一種だ。阪本順治監督からM資金を題材とした作品作りを持ちかけられ始まったが、構想中の2008年にリーマン・ショックが発生。世界経済の危機を目の当たりにし、作品は現代と切り結ぶものとなった。そして11年の東日本大震災を経て、高まった思いがある。「人類は豊かになるために社会と経済のシステムを作った。


が、今はそのシステムに、立ち止まるなと強制されている時代。例えば原発を止めれば、(経済の停滞という)別な危機に直面する。このシステムに懐疑的にならなければ」 M資金を飯の種とする詐欺師・真舟が街中で、声をかけられる。

高層ビルにあるオフィスを訪ねると、Mと名乗る男が真舟に50億円の報酬を提示し、実在するM資金を盗み出すよう持ちかけた。

戸惑う真舟を、Mは誘う。「ぼくと一緒に、世界を救ってみませんか?」と――。 原作付きの映画なら通例、完成前にある程度、小説は完成している。ただ、映画製作に深く携わってから小説に着手し、本作を事前に仕上げるのは「物理的に不可能だった」。


このため、1、2巻の刊行後も、同時並行で執筆。刊行中の10月に映画が公開されることになるが、「同じプロットを基に、小説と映画で二つストーリーを作った」という。小説ではM資金の背景や世界観を掘り下げ、重厚で濃密な仕上がりを目指す。


『亡国のイージス』『終戦のローレライ』など、最初に単行本を出す形でこれまで多くの賞も受けてきた。今回、文庫書き下ろしという特殊な形を選んだのは、既成の出版システムへの危機感からだ。「ハードカバーを買う人は今やニッチ層で、刊行しても話題にならない。世間との間口である文庫も、単行本から3年かかる。いま現在と切り結ぶ作品をより多くの人に届ける。
そのためには、文庫からスタートするのが合理的だと思う」

※自・評価
2013年10月19日(土)全国より公開された「人類資金」、という3年前の話であるから、少々カビくさいのは否めない。

いまチマタ(社会、世間、風聞、世評、風評、世、)では「パナマ文書」記事がパナマ以外から出てきて、とても賑っている。
とくに新聞社系は、スタートラインの号砲合図一斉スタートしたような感じだが、すでに関係記事は出尽くした感があって「いままで、どこで、なにしてたの?」と質問したいくらいのタイミングのまずさでやってきた。

ところできのう、アメリカ「ウオール・ストリート・ジャーナル」社がグーグルやフェースブックのやり方に、いいがかりをつけていた記事をネタに、ブログで意見してやったが返事はなかった。
内容は、私らが手間ひまかけてつくったニュース記事を、ことわりもなしに(和解済み?)に盗人よろしくネット配信しているのは許せない。と「社」側が主張していたが、連中は我々は「メディア社」をなりわい、としている企業ではなく、チマタに流布されているニュースの新聞配達をただでやっているだけで、それを読んでいるのは自分たちではない。だから金は払わない。

といったら、「社」側は、そんなにこといっておきながら、あんたら編集にまで口を出してんじゃん、それで広告とリンクして上位ニースに広告を貼り付けて、それでクライアントから高い報酬を稼ぎだして、おまけにかなりの節税対策に力をいれてるって話だって?。

ついでだからいっちゃうが、暗がりの藪を叩いてみたら蛇が出てきそうな雰囲気だった。もしかすると本物の錦蛇か、はたまたアナコンダがでてくるかも。

「ニシキヘビ」と「アナコンダ」の棲んでる生息地が全然違うと、指摘しようと思ったが、なんだか幼稚園生の口喧嘩の受け売りしているようで情けなくなってきたし。

「パナマ文書」に何が書いてあるのか知らない。また一部報道の範囲の記事を読んだところで、一国の首相、大統領クラスが辞任したとかしないとか、バタバタしているが、こっちとしては馬耳東風の呈で関与しない。

もともとそれは素性のしれない巨額資金を国が認定した金融機関に預けると税金だの、出入れ勘定の詮索だの、根掘り葉掘り訊かれるので、そんなことしていたら税金官僚が、あらゆる法律を駆使して、税の取り立てをしてくるので、はじめから銀行は信用しない、というパラドックスになる。
となると巨額利益金隠蔽に「タックスヘイブン」は欠かせないことになるので、高額所得長者番付表の恒久的上位ランク者は、その文書リストに載っている可能性は大いにありえる。

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エリートの資産隠し暴いたパナマ文書 ピケティ氏が警鐘
■ピケティコラム@ルモンド朝日デジタル2016年4月20日05時02分
 タックスヘイブン(租税回避地)や金融の不透明さに関わる問題が、何年も前から新聞の1面をにぎわしている。この問題に対する各国政府の声明は自信に満ちたものだ。だが、残念ながらその行動の実態とはかけ離れている。ルクセンブルク当局が多国籍企業の租税回避を手助けしていたことが暴露された2014年のルクセンブルク・リークで、多国籍企業が子会社を利用して欧州にほとんど税を納めていないことが明るみに出た。16年の「パナマ文書」が明らかにしたことが何かというと、先進国と発展途上国の政治・金融エリートたちが行う資産隠しの規模がどれほどのものかということだ。ジャーナリストが自らの任務を果たしているのは喜ばしい。一方で、政府が果たしていないのが問題なのだ。08年の金融危機以来、何もなされてこなかった。ある面では事態は悪化してしまっている。

 順を追って見ていこう。欧州では税の引き下げ競争の結果、大企業の利益に対する課税の税率がこれまでにないレベルになった。例えば英国は課税率を17%まで引き下げようとしている。主要国では先例のない水準だ。しかもバージン諸島や王室属領にある他のタックスヘイブンを保護したままである。何もしなければ最終的にどの国もアイルランドの課税率12%に並ぶだろう。0%になることもありうるし、投資に対する補助金まで出すはめになるかもしれない。そんなケースがすでに見られている。

 一方米国では利益に対して連邦税が課され、税率は35%だ(さらに5~10%の州税がかかる)。欧州が民間の利権に振り回されるのは、欧州は政治的に細分化されており、強力な公権力が存在しないからなのだ。この袋小路から抜けだすことは可能だ。ユーロ圏のGDP(国内総生産)と人口で75%以上を占めるフランス、ドイツ、イタリア、スペインの4カ国が民主主義と税の公平性に基づいた新条約を結び、大企業への共通法人税という実効性のある政策を取れば他国もそれにならうほかなくなるはずだ。そうしなければ世論が長年求めてきた透明性の確保につながらず、しっぺ返しをうけることになるかもしれない。

 タックスヘイブンに置かれている個人資産は不透明性が非常に高い。08年以降、世界のあちこちで巨額の財産が経済規模を上回る速度で成長し続けた。その原因の一端は、他の人々よりも払う税が少なくてすんだことにある。フランスでは13年、予算相がスイスに隠し口座は持っていないとうそぶき、省内でその事実が発覚する懸念はなかった。ここでもまた、ジャーナリストたちが真実を明らかにしたのだった。

 スイスは、各国間で金融資産情報を自動的に交換することに公式に同意した。パナマは拒否しているが、この情報交換で将来的に問題が解決されると考えられている。だが、情報交換は18年になってようやく始まることになっているのに加え、財団などの保有株には適用されないといった例外まで設けられている。しかもペナルティーは一切設定されていない。
つまり、私たちは「お行儀よくしてください」と頼めば、各国が自発的に問題を解決してくれる、そんな幻想の中にいまだに生きているのだ。厳格なルールを順守しない国には、重い貿易制裁と金融制裁を科すということを実行に移さなければならない。ここではっきりさせておこう。どんなわずかな違反に対しても、その都度こうした制裁を繰り返し適用していくのだ。もちろんその中にはフランスの親愛なる隣国スイスやルクセンブルクの違反も含まれるだろうが。こうした繰り返しがシステムの信頼性を確立し、何十年にもわたって罰を免れてきたことで生み出された、透明性が欠如した雰囲気から抜け出すことを可能にするだろう。

 同時に、金融資産を統一的な台帳に登録するようにしなければならない。欧州のクリアストリームや米国の証券預託機関(DTC)などといった金融市場で決済機能を果たす機関を、公的機関が管理できるようにする。こうした仕組みを支えるため、共通の登録料を課すことも考えられる。得られた収入は、気候対策などの世界全体に関わる公益の財源にあてることもできよう。

 疑問がまだひとつ残っている。不透明な金融と闘うために、各国政府は08年からずっとほとんど何もしてこなかった。なぜなのか。簡単に言えば、自ら行動する必要はないという幻想の中にいたからだ。中央銀行が十分な貨幣を発行することで、金融システムの完全な崩壊を免れ、世界を存亡の危機に追いやる過ちを避けることができた。その結果、たしかに景気後退の広がりを抑えることはできた。
しかしその過程で、必要不可欠だった構造改革、行政改革、税制改革をせずにすませてしまった。公的セクターと民間とが持っている金融資産は全体で、国内総生産(GDP)のおよそ1千%、英国では2千%にあたる。それに比べれば、主要中央銀行の金融資産の規模は、GDPの10%から25%に上がったとはいえ小さいままで、必要が生じれば、より増やすことができる水準であることは安心材料だろう。
 しかしここからわかるのは、とりわけ民間部門のバランスシートが膨張し続けていることと、システム全体が極めて脆弱(ぜいじゃく)であるということなのだ。願わくば「パナマ文書」の教訓に世界が耳をかたむけ、いよいよ金融の不透明さに立ち向かわんことを。新たな危機を招かぬうちに。

(〈C〉Le Monde,2016)
(仏ルモンド紙、2016年4月10-11日付、抄訳) ◇
 Thomas Piketty 1971年生まれ。パリ経済学校教授。「21世紀の資本」が世界的ベストセラーに
(記事引用)